Nobuyuki Takahashi’s blog

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小牧市民病院研究会

2010年 6月 22日

16:00 授業を終えてすぐに大学を発つ。今年度一回めの研究会を行う。早いもので小牧市民病院との協働関係は6年を越えた。当初は院内に「癒しとやすらぎのプロジェクト委員会」を設置していただき、幅広い年齢層、広範囲の部署から委員を集め、毎月緊張感のある研究会を行っていた。小牧市民病院は典型的な急性期病院だ。広大な3階フロアは手術室と集中治療室で埋まる。集まる看護士さんやドクターはいつも顔面蒼白でいつもぎりぎりで仕事をしているのが伝わってくる。病院職員に負担になることもあって2年前からこの委員会形式を解体し、必要に応じた部署との協働にしぼりこんだ。
今回は4月に実施した職員向けのアンケートをもとに、私たちやさしい美術プロジェクトの方から作品の設置がのぞまれている部署、いっしょになって問題を解決していくことができそうな部署に作品プランを提案する。
その作品プランとはモビールである。一昨年から昨年にかけて2年間小児病棟の環境整備に取り組み、病室の天井にモビールを届けるというものである。ところが、最終的には子どもたちが飛びつき、ベッドからの落下の危険性が否めないところから病室内の展示を断念した。最終的にはデイルーム天井に張り巡らしたワイヤーにびっしりとモビールをつり下げた。
今日、お話しさせていただいた4病棟と6病棟。建物自体の環境は画一的で変化はない。しかし、入院している患者さんは違う。4病棟は妊婦さん、赤ちゃん連れのお母さんが入院していて、院内では唯一「めでたい」場所でもある。一方6病棟は脳梗塞や脳血栓などで脳にダメージを受けた方が多くいる病棟。看護士さんらが目の届くデイルームで食事をする方もいる。このように病院と一口に言っても、病棟によって状況は一変するのだ。そうした諸条件を担当の看護師さんから聞き、さらに現場に行きその現実を肌で感じてくる。
研究会が終わったのが18:00。ちょうど食事の時間なので、担当の看護師さんに断って6病棟に見学に行った。デイルームの真ん中に楕円状にテーブルを置き、それを囲むようにして5〜6人の患者さんが食事をとっている。点滴を打ちながらの方がほとんどだ。看護師さんは食事中もできるかぎり話しかけるようにしていた。食事中の会話を大切にしているのだろう。私たちがここでやるべきことは、この空気感の中でさして気にかかるでもなく、なんとなくいつもより明るく、心地よい空間にすること。作品を注視してしまうことがないように配慮しなければならない。

レンチで手すりをはずすスタッフ川島

18:30 鷲見広孝くんが制作した作品「その下にあるもの」を一時搬出する。渡り廊下の1階と2階をまたにかけるように虹を模したダイナミックな作品だ。プラスチック段ボールに穴を開け和紙を貼り込んでおり手間もかかっている。しかし、いたずらのためその和紙部分に穴を開けられ、虹のシェイプが認められないほどに痛んでしまっている。痛々しいダメージを受けた作品は病院にはにあわない。
20:30 搬出作業終了。例によってスタッフ川島と搬出ラーメンを食す。

一時搬出した鷲見広孝作「その下にあるもの」(部分)

小牧市民病院 相談日

2010年 6月 8日

16:00 スタッフ川島とプロジェクトルームを出る。
16:30 小牧市民病院に着く。食堂でしばし休憩。
17:00 2階総務課に顔を出す。やさしい美術の取り組み担当者吉田さんが忙しそうにしている。さっそく3人だけの検討会を始める。
小牧市民病院の各部署にアンケートを配り、昨年一昨年と続けて実験を重ねて展示したモビール作品についてとアート・デザインの取り組み全般についてたずねる意識調査を行った。その結果と結果を受けて今年度1年間の活動の計画を説明した。3分の2の回収率が物語るものは何か。小牧市民病院は典型的な急性期病院である。働いている職員は忙しくてアートのことなど考えていられないのかもしれない。モビールについては設置を希望するというはっきりした意思を示した部署はなかったが、積極的に捉えている部署もある。そうした積極的な部署と相談し検討を重ねられれば質の高い作品を医療環境に寄り添ったかたちで展示できるはずだ。スタッフ川島はアンケートの結果をまとめたので特に留意すべき点が頭に入っているので補足をいれる。今年の計画はそのアンケートの結果に基づいたものであり、取り組む部署(相談部署)、設置場所の根拠にもなっている。
続いて年間のスケジュールも説明する。私たちは小牧市から委託されてこの事業に取り組んでいる。活動にお金が使われる以上、いかほどのボリュームの取り組みがどのような計画で実施されて行くかは綿密な計画を示さなければならない。もちろん、計画を遂行する責任を負うのも当然だ。
大旨の了解を得て、ミーティングは終了。次回はモビールの設置場所および担当部署との検討に入って行く。

化学療法室前の棚には抗がん剤の副作用の解説やかつらなどが置かれている

総務課吉田さんとの相談のあとは作品入れ替えを予定している、3階の化学療法室廊下に行く。ここは森田佳奈さんのペインティングを展示している。抗がん剤を投与する場所であるため、外来から離れたところに施設はある。清潔感を強く感じるが独特のぴりっとした緊張感が走る感じもある。
3階のICU(集中治療室)前もモビール設置の候補に挙がったが、手術室と隣り合わせで、モビール

集中治療室の扉周辺

の空間性が活かせる空間ではないとの判断。入り口の窓ガラスに有機的なフォルムの作品があると良いかもしれない。
18:30 小牧市民病院をあとにする。
19:00 プロジェクトルームに戻るとリーダー古川の仕切りでミーティングの途中だ。作品のプランが2〜3つ出てきている。楽しみだ。
発達センターちよだのワークショップ参加を希望している新メンバーも二人出てきた。いいスタートだ。

小牧市民病院の取り組み準備

2010年 5月 24日

先週回収した小牧市民病院の職員向けアンケートの集計の取り方をスタッフ川島と相談。定量化する材料にはならないが、今年度、どの部署、どこの場所と協働するのかを判断する材料とする。
一年間あるいは2年間になるかもしれない協働のための根拠が必要である。
アンケートの回答からいかに小牧市民病院が忙しい病院で、アートの取り組みまで気が回らないということがよく伝わってくる。回答だけを読んでいると、病院にアートは必要ではないのでは、とまで思えてくる。500床を越える急性期病院の現実は甘くはない。
私たちは小牧市から助成を受けて活動している。病院利用者に届いて行くアートの試みを行っていくのが私たちの使命なのである。だからこそ、日々相談し、連携していける担当部署の選定は大切だ。

職員から寄せられたアンケートは3分の2の回収率

小牧市民病院 四季色さんぽ道搬出

2010年 5月 17日

5:30 名古屋駅着。高松からの夜行バスを降り、自宅へ。
今回の大島も本当に濃密な日々だった。(後日本ブログにて報告します。)
6:30 帰宅。子どもたちも奥さんも皆起きている。コーヒー一杯クロワッサンを流し込んで、荷物の後片付け。
8:00 出勤。
10:00 スタッフ川島が来たところで軽くミーティングする。大島で出会ったこえび隊の人々、入所者との交流の様子を話す。こえび隊で何度かお手伝いしていただいた方が名古屋にお住まいで、大学にくるかもしれないと話しておく。
11:00 研究室で仕事をしていたら、プロジェクトルームから電話がある。なんと、午前中話していたこえび隊の小坂さんがプロジェクトルームを来訪!昨日まで大島で一緒にギャラリーを掃除していた人が、ここにいるなんて。
なんでも香川から電車で名古屋駅に着き、その脚で中央線に乗り換えて荷物を持ったまま大学まで来てくれたのだ。
小坂さんは社会学が専門の研究者の卵。大雑把には「他者の痛みに共感し、行動につながること」が研究テーマだそうだ。やさしい美術の活動や大島での活動はまさにそのテーマと重なる。これまでに身体、現象学などを研究し、文献を読みあさってきたが、研究に深度を与えるために現場に赴くことを決意し、こえび隊として大島の活動に参加している。私は歴史的文脈、各専門分野からの視点からやさしい美術プロジェクトの活動がひも解かれていくことを恐れない。私たちが進めている社会実践は柔軟性に富み、人の営みのあらゆる側面にも連なる普遍性を帯びていると直感している。活動の形式や領域の位置づけを固定化していないところも私たちの活動の強度だ。やさしい美術プロジェクトは人の素直な情動を受け止め、発展させる要素を多分に持っているのだ。小坂さんのように共鳴してくれる人がいることがとてもうれしい。
四季色さんぽ道の撤去。処置室にも作品を展示している。 16:00 授業を終え、スタッフ川島と小牧市民病院に向かう。今日は約一年間展示し、四季折々のモビールを展開してきた作品「四季色さんぽ道」を搬出する。
17:00 小牧市民病院に到着。総務課の吉田さんに会うと、以前お願いした職員向けアンケートを手渡される。今後このアンケートをもとに今年度の活動を共に進めていく部署を決定していく。
自家用車にみっしりと作品を積み込む 4病棟と言われる4階に行く。小児科病棟ではあるが、子どもさんばかりではない。点滴をした患者さん、手術を終えたばかりの患者さんも多く見かける。胸がきゅんと締めつけられる。小牧市民病院を初めて訪問した頃を思い出す。患者さんの表情やご家族の様子を見て、「何かを始めたい。」と思った。あれから丸6年がすぎた。初動機は失われてはいない。
早速作業にとりかかる。設置には多くの労力を要した。設置後もモビールの入れ替えで何度も当病棟を訪れた。搬出はあっけないものだ。約2時間で搬出完了。その後は作品のコンディションを見回り、アンケートボックスをチェックする。
19:30 作業を終え、小牧市民病院を出発。途中「搬出ラーメン」を食べる。
※搬入、搬出をしたときに食べるラーメンのこと。特に搬入ラーメンの味は格別だ。
20:30 研究室にて明日の授業の打ち合わせ。
22:30 帰宅。

小牧市民病院 活動報告会

2010年 3月 17日

活動報告会の様子

昨日深夜になんとかレジュメのデータを仕上げた。
今日は年度末ごとに開催している小牧市民病院での活動報告会だ。泉も3年間のスタッフ業務の総まとめとなる。
13:30 プロジェクター、スクリーン、PCを車に積んで大学を出発。
14:00 小牧市民病院に到着し、総務課に行くと事務職員の担当者が会場となる8階大会議室まで丁寧に案内いただく。
荷物が多く、テーブル、椅子を並べたりと開場時間まで忙しく準備する。男手が欲しかったところだが、なんとか私と泉で準備できた。
15:00 末永院長が忙しい中かけつけてくれる。「高橋先生の取り組んでおられるこのプロジェクトは全国的に広がっている美術と医療の協働プロジェクトのさきがけですね。これからもお願いしますよ。持続することが大切ですね。」とありがたい声をかけていただいた。
レジュメとスライドを見せながら、今年度の活動、作品を振り返る。昨年度から継続した研究と実践、季節感の創出をはかった作品の提供、アンケート調査の分析結果の発表など40分程度で解説する。
質疑の時間を設けて末永院長をはじめ、様々な現場で仕事をしておられる看護師さん、事務職員さんから意見や感想をいただく。どのご意見も医療従事者として積極的な意志に満ちていて、私も手応えを感じる。
平成16年から続けてきた小牧市民病院での活動も6年が経つ。5年を過ぎたあたりから「継続は力なり」を地でいく地道だが本質的なテーマ(病室の天井の環境整備や中待ち合いや処置室の装飾など)を展開してきた。病院サイドの窓口となっている総務課職員の吉田さんと年度をまたいで進められたことが良い結果を生んだと実感。そして私のパートナーとしてサポートしてきてくれたスタッフ泉の活躍によるところが大きいと思う。
泉さん、3年間おつかれさま。まだ細かい仕事が残っているけれど、小牧市民病院での今年度の事業はこれで幕を閉じる。

小牧市民病院 モビールプラネット再び

2010年 3月 4日

9:30 すでにアトリエ、研究室の引っ越し作業が始まっている。業者の段取り、荷物の扱い、見事だ。親方はまだ若い青年だがなかなかしっかりしている。いくつか荷物の指示をのこし、今日の小牧市民病院への搬入準備に取りかかる。
10:30 荷物をスタッフ泉の車に積み込み大学を出発。今回搬入する作品の作者であるスタッフ井口が徹夜で病院に合わせた配色の新作を制作してプロジェクトルームに届けてくれた。間に合ってよかった。
11:00 小牧市民病院に到着。メンバー川島と待ち合わせる。
病棟4階に行きデイルームに作品、道具、脚立を持ち込む。デイルームには入院している病院利用者のご家族が休んでいたり、時には手術後の痛々しい姿で点滴棒片手の方も見受ける。そうした動いている病院の日常に乗り込んで行き作品を設置する、これがやさしい美術プロジェクトの搬入だ。
まず、現場をしっかりと把握する。今回の作品は天井付近にワイヤーを通し、そこにモビールを結わえて行くプランだ。基礎となるワイヤーをどこを基点に張るか。線的に配置する当初の予定を変更し、空間に広がりを持たせる配置プランに変更する。ワイヤーを掛ける場所も吟味しなければならない。離脱して落ちてくるということになれば紙でできたモビールなれど、けがをする人がでるかもしれない。絶対離脱しないという確信が持てる部位を見つけられるかがポイントとなる。
ワイヤーをバランスよく張り終えたところで昼食。
昼食後は休憩を一度もとらず、作業に没頭する。

モビールプラネット設置作業

今回のモビールは2人の作者の共演である。先述した井口とデザイナーの溝田さん。2人の制作したプロトタイプのモビールはやさしい家の企画展で発表した。日本家屋である「やさしい家」ではハイトーンの配色が木の天井に良く映えた。しかし、病院内に合わせると以外にもビビッドな配色でかつコントラストの高いものが惹きたつ。現場に持って来なければけっして判断できないことであり、こうした予定調和が壊れていくのが現場設置の醍醐味でもある。
中心となるモビールを配置していき、その周囲を引き立てるようにほかのモビールを配置していく。道行く病院利用者の方々から「あら、きれい。」「すてきなアイデアですね。」と声をかけられる。私たちの作業の様子をじっと見守っている人もいる。幾度となく立ち会ってきた搬入設置の場面だが、こうした反応をいただけるのは本当にうれしい。毎回新鮮だ。
14:00 小児科病棟処置室、外来の装飾を今年手がけている、森さんが小牧市民病院に到着。看板屋さんのお仕事に都合をつけて来ていただいた。
15:00 モビールの大枠の配置が見えてくる。「やさしい家」での展示に近い印象になりそうだ。
16:00 小児科外来の展示する時間になり、森さんとスタッフ泉が作品を持参して向かう。
私と川島はひたすらモビールの設置に精を出す。

処置室浮遊感いっぱいになった

17:30 外来の展示作業を無事終わらせて今度は病棟の処置室天井に作品を設置する。森さんが制作した絵本の登場人物が色とりどりの紙飛行機に乗って処置室の空間を飛び回る。なんともゆかいな世界だ。処置室は子どもたちが恐れる場所。「怖くて恐ろしい場所」を「来て得した場所」にかえる。
内科処置室とデイルームの設置作業が同時並行で進む。メンバー川島には空間設置の作品を制作する上でのポイントを伝えていく。立体や空間を造形していくにはまずフットワークが必要だ。とにかく足を使って様々な角度から作品を見つめるよう川島に指示する。
18:30 デイルーム展示、処置室の展示が完了する。通行する病院利用者から励ましの言葉や作品の感想をいただく。本当にうれしい。
20:00 4階病棟の設置を終え、破損した作品の再設置、新たに作品の出品をお願いしたayakoさんの消しゴム版画による多色作品の設置に向かう。
ayakoさんの作品設置を試みたが、ワイヤー金具の不備や設置方法の問題が起きて、次回の設置作業の宿題とする。
20:30 小牧市民病院を出発。本学にもどる。