Nobuyuki Takahashi’s blog

Archive for the ‘ちよだ’ Category

発達センターちよだ見学 ホットケーキ

2010年 5月 21日

※遅ればせながら5月14日、15日、16日の大島の取り組みを更新しました。どうぞ、ご覧ください。
午前中は実技・学外実習(やさしい美術は課外授業として年間1単位を習得することができる)の書類手続きや大島青松園への連絡、入所者への連絡に追われる。
13:00 私とスタッフ川島、ワークショップメンバーの村田、浅井の4名で発達センターちよだに向かう。新年度をむかえ、まだ子どもたちと会ったことのないメンバーがいるため、まずは顔合わせを兼ねてちよだの取り組みを見学させていただくことにした。
14:00 ちよだに到着。子どもたちが来る時間まで一時間ほどあるので、近くの生協に行きドリンクを買い子どもたちを待つ。
15:00 私以外はピンク色のつなぎに着替える。平成19年の10月から取り組みを始めた時、やさしい美術のメンバーをおぼえてもらうために行ってきた工夫だ。
子どもたちには見学でもワークショップでもどちらでもいいことだ。私たちは構えずに子どもたちと遊ぶ。
遊ぶ子どもたちを見守る藤棚 Kくんは園庭の土場に水を溜め、泥遊びに興じる。全身泥だらけだ。Sくんはひたすら穴堀に集中。Aちゃんはすぐに着替えたかと思ったら、いきなり絵画の取り組みの部屋に行き、画板に貼ってある画用紙に絵の具を塗りたくる。Mちゃんは車椅子でお母さんの手にひかれてやってくる。いつもより人が多いためか、少し緊張気味だ。
おやつの時間ではホットケーキを焼くことになった。自分の食器を持ってくる、ネタをかき混ぜたり、ホットプレートの上で焼く作業を皆で手伝う。子どもたちが積極的に関われるよう雰囲気を作っていく。
Mちゃんは手先の力が入らない。でも、人一倍積極的で自分でやれることを自分でやろうとする。それを皆で見守る。彼女は自分の分のホットケーキをフォークで一口サイズに切っている。とっても時間がかかるけど、途中であきらめたりしない。「はい、どうぞ。」と私に差し出す。「僕にくれるの?ありがとう。」私は手のひらにのったホットケーキをありがたくいただく。ホットケーキのかけらはとっても美しい形をしていた。
気温は30°近くまであがっただろう。子どもたちは絵画の取り組みより外で遊ぶことに夢中だ。画板を園庭に持ち出したり、空き箱の底に画用紙を置き、箱の側面にぶつけながら描くストロークを楽しむ。
毎回ちよだに来て思うのだが、職員さんの細やかな対応に学ぶべきことがたくさんある。きっと日々職員同士でミーティングを重ね、子どもたちそれぞれに何が必要で、どのような声かけをしていくかを綿密に打ち合わせなければできないことだろう。それに加えて送迎にくるご父兄への心配りである。さりげなく最近の子どもたちの様子を聞き出し、今日の取り組みの成果をきちんと見てもらっている。微細な変化、成長を見逃さず、親御さんと分かち合う。
他者と他者が関わる場において何かが響き合うこと。そこに何とも言えない肌合いが自身の中に染み込んでくる。これは実際にそこで経験しなければ分からない感触だ。
17:00 子どもたちのお母さん方が迎えにくる。
18:00 片付けをして職員の皆さんと今日の感想や子どもたちの様子を語り合う。ちよだではこの反省会を「ケース」(ケーススタディー)と呼んでいる。この時間は次回の取り組みにフィードバックするための大切なプロセスだ。
18:30 発達センターちよだを出る。次回の取り組みが楽しみだ。
19:15 本学に到着。片付けと連絡業務を終わらせる。
19:30 本学を出発
20:30 名古屋市昭和区吹上のとあるカフェで井木、泉と待ち合わせる。ほどなくデザイナーの溝田さんがやってくる。定食をがつがつ食べたあと、溝田さんから大島の取り組み{つながりの家}、カフェ・シヨル、GALLERY15のロゴデザインが提案される。すばらしい仕上がりだ。このあとブラッシュアップして6月上旬には完成する予定。お楽しみに!
23:30 帰宅

発達センターちよだ 鏡を見る

2010年 5月 11日

今日は発達センターちよだへ打ち合わせに行くことになった。ミーティングの議論もそのまま持ち込んでちよだの職員さんにもぶつけたいと思っている。腹を割って相談することがとても大切。殊に長期で続けている取り組み。お互いの信頼感のもとに踏み込んだ議論ができるはずだ。
16:00 発達センターちよだに到着。今年度ディサービスちよだの一環「絵画の取り組み」の担当となった関谷さんと挨拶。さっそく今年度の取り組みを進めるべく検討会議を始める。
私の方から、やさしい美術プロジェクトのワークショップチーム(ちよだチーム)の現状報告と取り組み姿勢について説明した。ちよだからは今年度「絵画の取り組み」に参加している児童は昨年から参加している4名という報告を受ける。取り組みの導入も違和感がなく、流れもできているとのこと。子どもたちの最近の様子を関谷さんからお聞きして、ゆっくりだけれど変化し、成長している様子が伝わってきた。
途中、一昨年「絵画の取り組み」の担当だったちよだ職員の伊藤さんが会議に加わる。やさしい美術=ピンクのつなぎのお姉さんたち というイメージが子どもたちに定着しているという。新しいメンバーで取り組みを実施していっても大きな障壁はないだろうとのことだ。また、3年前に取り組んだワークショップをもう一度行うと子どもたちの反応はどのようなものか、前回の子どもたちの様子と照らし合わせることも可能だ、との話もあがる。ゆるやかな子どもたちの成長は毎回のワークショップに埋没していると見失いがちだ。長期にわたり行っている取り組みならば時間をおいてリメイク版のワークショップを行うのもいいかもしれない。
私たちはワークショップチームのミーティングでちよだでの取り組みの骨子を立ててみた。それは
・子どもたちの感性の可能性を広げるため、幅広い体験を積み重ねる。
・子どもたちの、日常から解放された自由な時間を創りだす。
・他者との関わりの場を創る。
の3本の柱である。
「幅広い体験」とは、美術の専門性からより多くの素材のバリエーションや感覚の引き出しをつくっていくことであり、当初からちよだ職員から期待されてきたことである。
「日常から解放された時間」とは、学校でもなく家(家族)でもない、慣れ親しんだちよだでのびのびとした時間を過ごすことである。「絵画の取り組み」に参加している児童は全員ちよだに通園していた子どもたちである。
そして「他者との関わり」。これは子どもたちから見た私たちとの関わりであり、私たちにとっては障害を持った子どもたちと関わるという両義的意味である。子どもたちの表現から私たちがキャッチすること、それを次の取り組みに活かすことは実行して行かねばならないことである。同様に重要なことは私たちが純粋無垢な子どもたちと接しているうちにしとどに溢れ出てくる自身の内面と向き合うことである。怒りやいらだち、衝動。内に秘めた感情をきれいごとを言って受け流すのではなく、自分でしっかと受けとめていくことによって子どもたちへの声のかけ方、働きかけに如実に反映されてくるのだ。生な人間同士が関わり合うこと。ちよだ職員の皆さんは毎日子どもたちと真摯に向き合い、子どもたちという鏡を得て、自分自身と向き合っている。
私は今日の打ち合わせによって共通認識が得られたことがうれしかった。専門領域は異なっても「一緒に考え、悩み、乗り越えて行く。」道を歩いて行くような安心感が私たちを包んだ。
17:00 ちよだでの打ち合わせを終え、大学に向けて出発。今後は相談しながら、毎月一回のワークショップを実施する予定だ。
17:45 大学に戻り、プロジェクトルームに帰ると新メンバー10名がリーダー古川の話を聞いているところだった。プロジェクトルームの使い方をガイダンスしているのだ。新メンバー間も交流が始まり、緊張感が解かれてきた。あいにくの雨模様も今日は気持ち良く感じるほどだ。

コンピュータの使用についてガイダンスするリーダー古川

発達センターちよだ 今年度最後のワークショップ

2010年 2月 26日

10:00 3月6日から実施する大島焼ワークショップの打ち合わせ。昨日も打ち合わせをしたが、今日は昨日都合がつかなかった学生に説明した。時間をたっぷりと使い、根気よく何度も、何に接しても揺るがない忍耐がディレクターには必要だ。

枠には透明のアクリル板が差し込まれている

12:00 発達センターちよだのワークショップを行う学生、教職員混成メンバーがプロジェクトルームに集合。
12:30 大学を出発。車中では冬季オリンピックフィギャースケートのことでもちきり。携帯の電波が悪く、レンタカーのAM放送を聞く。
13:00 大盛り上がりのところ、発達センターちよだに到着。ピンクのつなぎに着替えようとしたところ、スタッフの赤塚から「5着しかないので誰か普段着でお願いします。」そりゃ、あーた今言っても…。私しかいないでしょうが!ま、私の服はスーツ以外は絵の具がついているので、どうということはない。
部屋にブルーシートを敷き、透明のアクリル板を支持体とした透明絵画のセットを設える。絵の具もメディウムをたっぷりと混ぜて定着しやすく加工しておく。
アクリル板の支持体は見事な出来映えだ。加工作業を請け負った木工室の工房職員榊原さんの腕も確かだが、考案と加工作業に携わった赤塚の努力に感服。ワークショップの実施時間はわずかだが、その背景には膨大な準備の時間、労力、却下されたアイデアが積累々としているのだ。
この「絵画の取り組み」は発達センターちよだ職員、パート職員、ボランティア、そしてやさしい美術の活動によって支えられている。
14:30 パート職員とボランティアスタッフの方々と挨拶を交わし、子どもたちを迎える準備に入る。
15:00 子どもたちがお母さんの手に引かれてやってくる。遊んだり、言葉をかけたりしながら、雰囲気を作っていく。子どもたちには基本的に1人ずつ担当者がつく。その方が、取り組みの後も子どもたちの変化や成果の報告がしやすい。一緒に楽しむことと責任を持って子どもたちをみることの両立が大切だ。私は毎回参加できていないが、赤塚をはじめ、常連のワークショップチームのコミュニケーションは目を見張るものがある。
おやつの時間。肉まんを皆で食べる。歌を歌う。人が生きていく上での大切な営みを皆で楽しむ。楽しみ方のルールも発達障害を持つ子どもたちに教えていく場でもある。私は男の子3人に人気。いつも女性が多いからだろうか、男の人が来るとワイルドな遊び方を仕掛てくる。おっと、手加減もおぼえなくちゃねー。
さて、おやつが終わり、お着替えをして「絵画の取り組み」に入る。着替えさせるのはなかなか大変だ。逃げ回る子どももいる。でも着替えることで折り目切り目がつくのは確かだ。
最初は透明な画面をどうして良いかわからない、という子どもがいたが、平滑でクリヤーな画面に絵の具がつくと一気にのめり込む子どもも見受けられた。
いつもは制作の時間が短かった子どもが30分近くも絵の具を塗り続けることがあったり、「いつも(画用紙ではなくて)透明だったらいいのに。」とコメントも聞くことができた。今後成果の結果を見て分析と考察が必要だが、支持体の設えが私たちの取り組み方(つまり、絵画と向き合う、イーゼル型)を想定してしまっているが、子どもたちの障害や個性的な指向性に柔軟に対応できるものを開発する必要があるかもしれないと思った。寝転がって描く、上を歩く、トランポリンをしながら描くなどなど…描く状況に子どもたちのルールはない。いずれにしても、これだけの完成度を持った支持体ができたことで初めて見えてきた問題点である。
16:30 子どもたちの取り組みが一区切りつき、片付けをしながらお母さん方が迎えに来るまで力一杯いっしょに遊ぶ。布に乗せてひっぱりまわす、滑り台を転げて遊ぶ、手をつないでトランポリンを飛び跳ねる。
17:00 お母さん方が子どもたちを迎えにやってくる。活動報告会に参加いただいたお母さんもみえる。今日の取り組みの様子を説明し、子どもたちの様子をお話しする。実作品を見ておどろいたり、とまどったりで鑑賞の時間は実に楽しい。私たちの関わりは一月に一度きり。発達センターちよだの職員さん、お母さん方は毎日の中の1日だ。できる限り想像力を働かせ、お母さん方の声にも耳を傾ける。
私から来年度も何とか取り組みを続ける意向を皆さんにお話しした。どのような形になるかこれから検討しなければならないが、継続し、関わり続けることで見えて来ることはたくさんある。
18:30 片付けを終え、今日のケース(ケーススタディー、反省会)を行う。それぞれが受け持った子どもたちの様子を報告する。場合によっては子どもの障害と照らし合わせて制作の様子が語られていく。他者の中で起きている変化を客観的に見ることは難しい。もし感じ取ったとしても、関わった人同士の間で起きたことはまた、他者には伝わりにくい。人と人がつながりを持つこと。ここにも普遍的で本質的なテーマが横たわっている。
19:00 発達センターちよだを後にする。近々親睦会にも誘っていただけるそうだ。
20:00 プロジェクトルームに到着。私は心を切り替えて明日からの大島行きの準備に入る。