Nobuyuki Takahashi’s blog

2008年 9月 12日のアーカイブ

想像力

2008年 9月 12日

衣服彫刻/adidas/高橋伸行

衣服彫刻/adidas/高橋伸行

「感覚は共鳴する。」証明する方法は誰も持っていないが。
共鳴の実例をあげるならば、それは2つの音叉の一方が振動することでもう一方が振動の刺激を受けて振幅が大きくなる現象のことである。私を捉えて放さないのは、見たところつながりのない2つのものが次元の異なる現象によって共に打ち震えるというシンプルな構造である。それは私たちの身体(それは見かけのヒトガタという意味において)は個別でありながら、共鳴する感覚を持ち合わせているのと似ている。こうした前提は共同幻想を育て、暴走し、時には敵対するもの(共鳴しないもの)に攻撃を加えたという歴史もある。とても恐ろしいことだ。
美術の表現は基本的に個から発せられるものだ。個の表現という地平があるからこそ、個が何処に連なるものかという視点を持つことができる。孤独な営みが共鳴の波紋を拡げるのである。
想像力のトレーニングが必要だ。現代において「痛い」と感じる人に「痛み」を感じる想像力は、自然と培われるものではなくなってきているように思う。何故だろうか。これからじっくりと見てゆかなければならない。
さて、次へのステップは想像することのできた感覚をしかと受け止めてゆくこと。そしてその感覚に自ら押し潰されないようにすること。