Nobuyuki Takahashi’s blog

2008年 11月 25日のアーカイブ

物理的ではない「つながり」

2008年 11月 25日

12月5日(金)6日(土)と新潟県十日町に出かける予定だ。大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレは来年に開催予定、やさしい美術プロジェクトは参加プロジェクトとしてすでに活動を進めている。
今日、定例ミーティングで新潟県立十日町病院と空き家活用「やさしい家」が連携していく方法について、メンバー竹中と話した。空き家と十日町病院の病室とを糸電話でつなぐ、という表層的で物理的な「つながり」を創り出すこととは少し違うのではないか、というような内容である。病院に自由に入ることが許されない芸術祭鑑賞者が、病院の空気を現実のものとして感覚的に受け取れるしくみを創ることができたらと思う。その逆も然り、病院に居ることを余儀なくされている人々が、外の光にふれ、温度をダイレクトに感じられるようなシステム。
話が少し抽象的になってしまった。この話をしながら、1つの作品を思い出した。
村岡三郎さんの作品だ。作品名は覚えていないが、人との距離、共有する時間、感覚というものについて、思いもよらない切り口で感じさせた作品だ。
その作品は広いギャラリー空間の中央に掌でにぎれる程度の円柱形の金属がしつらえてある。その金属の塊に触れるとその瞬間、強烈な印象が襲ってきた。そう、その金属塊は生暖かく、すぐに人肌を連想させた。人の体温に保たれている金属。それだけではない。なんと、作家本人である村岡さんの体温が目の前の金属塊にリアルタイムで再現されていたのである。無機質な金属塊と身体。あまりにもかけ離れた存在が体温という基準でつながりを創出している。村岡さんが今、どこで何をしているのか、わからないけれど、村岡さんの一部が私の前に在る。
なんとも不思議な体験。シンプルな構造から体験した人の数だけイメージを連想させる、すばらしい展示だった。
私がイメージしているつながりとはこのようなものだ。