Nobuyuki Takahashi’s blog

2009年 3月のアーカイブ

ハッピーウェディング

2009年 3月 8日

乾杯!!

師弟のふたり。(あえて顔を伏せますが)

3月7日 あっという間にこの日が来た。私の大事な人、ふたりが一緒になる日。
子どもたち二人を実家にあずけて夫婦二人で名古屋市の中心街栄へ。奥さんはオレンジ色のドレスにイタチのコート、髪はフリーダ(眉毛をつなげるのわすれたけど)のような出で立ち。私はダークスーツにイ・ジュングン氏の作品であるネクタイを着用し、ドレスアップして出かける。
結婚披露パーティーはイタリアンレストランで開かれる。30名ほどの出席者の8割はアーティストや美術関係者なので少しばかり「はずし」もありかな、と。
地下鉄で一昨年韓国ソウル市美術館で一緒に展示したアーティストM也さんにばったり会う。もちろん、向かう目的地は一緒だ。

18:00パーティーが始まる。私は新郎、新婦とも懇意におつきあいしてきたので、皆を代表して挨拶をさせていただいた。私の着用しているネクタイは前述のとおり新郎、新婦とも良く知っているアーティスト、イ・ジュングン氏の作品だ。5年前に開催したunusual combination展に出品した際にお互いに作品を交換した。アーティスト同士の絆は、国境や文化の違いをいとも簡単に乗り越える。作品を交換し合うのは表現者としての尊敬の念と信頼感を示すことに他ならない。今日この日を迎えるにあたって彼の作品を身につけることに決めていた。新郎、新婦ともに、「縁」つまり人と人の出会いとつながりを大切にしていると日々感じてきた。月並みな言い方だけれど末永くお幸せに、というメッセージを送るー。
乾杯の音頭は世界的なアーティストM島さん。新郎が「師匠」と慕う人で20年来のつきあい。私も学生のころお手伝いをしたり、お宅に遊びに行ったりで懇意にさせてもらっている。
形式張らないフランクなとてもすてきなパーティー。周りは冷やかしていたけど、新郎の白いタキシードと新婦のウェディングドレス、めちゃ似合っていた。お店が自慢のワインをがんがん飲み干す。会話もぽんぽんはずむ。
M島さんとやさしい美術について話す。「これからの日本の社会の中で、アートの存在意義を示す重要な活動だ。」とうれしい言葉をいただく。実はやさしい美術プロジェクトとM島さんとは切っても切れない関係がある。「やさしい美術」という活動名はM島さんとの会話の中で出てきた言葉だ。その人から背中を押してもらっている。なんか、とてもハッピーな気持ちになる。
新婦の同級生たちもたくさん会場に来ていた。そう、その全員がやさしい美術プロジェクトのメンバーだった。もう、全員抱きしめて廻りたいぐらいだったけど、我慢我慢。ひとりひとり自分の人生を歩んでいる。こうした機会がなければ、なかなか会うことがないけれど、元気そうな姿を見て、またまたハッピーな気持ちになる。
あっという間の3時間。食べるのを忘れてワインを飲み過ぎてしまった。「先生、顔赤いですよー。」とかつての教え子たちに言われながらも「今日飲まなくて、いつ飲むのよ!」と開き直る。顔が赤かったのはお酒のせいだけではないよ。うれしくって血がのぼってたんだよ。
帰りの電車で夫婦二人でパーティーを振り返る。
ほんとに楽しかった。うれしかった。めちゃくちゃ笑った。

挨拶。ネクタイはイ・ジュングン氏の作品

挨拶。ネクタイはイ・ジュングン氏の作品

トリプルブッキング

2009年 3月 6日

先週のちよだでのワークショップの作品

先週のちよだでのワークショップの作品

3月6日 今日は足助病院研究会、小牧市民病院聞き取り調査、発達センターちよだワークショップの3つの活動が同時に展開。朝からまとまった雨が降り、冬というよりは春の息吹を感じる。
私は足助病院の研究会に3名のメンバーとともに参加した。
研究会の冒頭で先週B棟で行なったワークショップの際に紙粘土の「おこしもの」のオブジェを患者さんが誤って食べてしまったことについて、私たちの配慮や準備が足らなかったことについて陳謝した。患者さんに大きな影響はなかったものの、それは結果であって、危険性の芽を摘むことを怠ると大きな事故につながる。気を引き締めなければならない。メンバー芳賀のクッションのオブジェについても縫い付けられたボタンが子どもたちの誤飲につながる危険性が指摘された。
これらの問題点をあげ、それを打開して行くための方策を具体的に検討することで、その作品の存在意義はより高まって行く。それは、その作品がだれに向けられ、どうあるべきかを問うことでもあるからだ。
帰りに足助病院近くの五平餅屋さんに行く。五平餅を頬張るメンバー古川の笑顔がまぶしい。とにかくうまいんだこれが。意外にもリーダー川島は始めてこの店に立ち寄ったと言う。皆あまりにも食いっぷりがいいので、思わずおでんも食べさせる。

びっくり屋のおでん。歯形が美しい。

びっくり屋のおでん。歯形が美しい。

帰路、光と青信号が重なる。

帰路、光と青信号が重なる。

サラブレッド

2009年 3月 5日

小牧市民病院小児科病棟でのインスタレーション

小牧市民病院小児科病棟でのインスタレーション

3月4日朝から慌ただしい。いくつかの確認事項をこなしながら、電話は5本もかかってくる。事務長との打ち合わせなどなど。11:00すぎにお弁当を食べていると、森をつくるおりがみMorigami(もりがみ)をデザインし、現在シンポジウムの冊子を編集・デザインしてくれているゆきこさんがプロジェクトルームに来訪。印刷会社との打ち合わせの間もひっきりなしに電話。昼食を終えた頃、小牧市民病院からスタッフ泉が聞き取りアンケートから学生とともに帰ってくる。私は食事後すぐに小牧市民病院の作品を仕上げるためのパーツを作る。学内は卒業制作展が終わり、学生や教員の姿を見かけない。ひっそりと静まり返ったキャンパスに唯一やさしい美術プロジェクトの活動拠点、プロジェクトルームだけが学生、業者、教員が出入りしてにぎやかだ。
14:00なんとか仕上げた小牧市民病院に搬入する作品を積み込み出発する。
14:30小牧市民病院に到着。すぐに作品を4階小児科病棟に運び込み、設置作業にとりかかる。
19:00いくつか修正点を残しながらもなんとか小児科病棟モビール作品が完成する。
3月2日と4日の二日間をかけて搬入作業を行なったが、その間にいくつも印象に残ったことがある。それはやさしい美術のような活動に実際に足を踏み入れてこそ感得する、説明しがたい充実感に通ずることだ。
小児科病棟とはいえ、常時すべての病室が子どもたちでいっぱいになるわけではない。大人、お年寄りがいる病室もある。ある人は寝たきりの旦那さんの手をにぎっている、泣き叫ぶ子どもを抱きしめるお母さん、点滴を嫌がる子をやさしくたしなめているお父さん…。作業をしていると、そこかしこから声が立ち上ってくる。脚立にのぼり、それらの声に耳を傾け、作品を設置するーまさにその行為が祈りであるかのような、崇高な感覚が粛々と高められて行く。やさしい美術プロジェクトで展示する作品は現場で時間をかけて設置する場合が多い。プロジェクトメンバーがその設置作業中に感動で内震え涙する場面に私は幾度となく立ち会ってきた。病院の日常の中でこっそりと設置作業をしている私たちは患者さんや病院職員さんたちにとって空気のような存在だ。それでも、私たちにとっては、病院の日常が鮮明に感じられる現場に立ち、自分が確かにそこに居る、という実感が全身に降りてくるのだ。
設置作業後に皆でみそラーメンを食べに行く。作品のパーツ制作を手伝ってくれたみんな、設置を手伝ってくれたみんな、ありがとう、おつかれさま!
21:00急遽面接をしなければならず、大学に戻る。23:30帰宅。
話は変わるが、今日の設置作業の休憩中に盛り上がった話題。やさしい美術プロジェクトのメンバーやサポートをしてくれている人々にはある共通点があることが判明したのだ。それはメンバーの親族や親戚に医療福祉や介護福祉に深く関わる人がいるということ。話を聞くとこれはかなりの確率のようで、信憑性は高い。かも。

そりゃ、ないだろう

2009年 3月 3日

今日、写真を現像に出している現像所から電話があった。なんとあずけたポジフィルムをネガフィルムの仕方で現像してしまったとのこと。大島で撮った大島の風、空気、温度…。それらがあっという間に単なるフィルムになってしまった。いい夢を見た夜のことを思い出そうとするけど、どうやっても思い出せない。思い出して言葉にするとそのまま消えてしまいそうだ。再生は一回のみ。
そりゃ、ないよなー。

ちょっと思った

2009年 3月 2日

先週たくさんの手を借りて完成したモビールフレームを小牧市民病院に搬入する。同時並行で昨年展示したもので破損した作品を修復して再展示。この忙しい時期に3本も4本も電話がかかってくる。どうにも首がまわらない。本当に首が痛くてまわらない…。
そんな中、車でラジオを聞いていると、スポーツ選手がインタビューを受けていた。その対話を聞きながらぼんやり考える。
スポーツ選手はその成果に対してたくさんの報酬を受ける。スポーツは何かの役に立つわけではない。その意味でアートと似ている。スポーツはわかりやすい。勝ち負け、強い弱い、白黒はっきりとしていて、所属も企業だったり、国だったりで、人々の関心を集めるばかりか、あっちを応援するだの、こっちのファンになるだので、人々の人生の希望が投影される存在となる。さて、アーティストの場合。国際的なアートシーンに君臨するアーティストはいつまでも斬新なコンセプトとだれも見たことのないものを創造し続けなければならない。スポーツと比べると、アートの世界は誰よりも早いとか、誰よりもたくさん得点するとか、そういったわかりやすさはない。しかしアートシーンでは常にマッチョで強く在り続けなければならない、というのはどこか似ている。
私は圧倒的少数の個人の叫びや声が美術作品となって顕われることはとても大切だと思っている。というか、守られるべき領域だと思う。いわば、それはどれだけ封印しようとしても払拭しようとしても消し去ることができない人間らしさの刻印であり、時代を表すカルテのようなものだろう。これらは毒とも薬ともなりうる。それでもなお、存在を認めなければ、私たちは前に進めない。それが、アートの存在感だと思う。
だからといって、すべてのアートはマッチョでなければならないのか。ここはもっと可能性を探る必要がある。
やさしいー美術とは、ミスマッチな取り合わせだ。強いに相対してのやさしい、ではあまりにも二極化した退屈な対比だ。私のイメージではお互いを映し合う鏡、どちらかが光を放つと逆照射されるような関係だ。

いつもの日々

2009年 3月 1日

修羅場のプロジェクトルーム。いくつもの活動が同時並行で進む。

修羅場のプロジェクトルーム。いくつもの活動が同時並行で進む。

先週はいつものように忙しい日々。忙しいうちが花だ。3つも4つも重要な動きが同時進行している。おかげでブログを書く気力も時間もない。
そのいつもの日々の一日を紹介しよう。
2月27日。前日にシンポジウムの冊子入稿を済ませたが、一向に仕事が減らない。午前中は締め切りがとうに過ぎてしまっているコース授業の関連書類の作成の傍ら、発達センターちよだの来年度の活動計画書を作成。その間に学生の作品プラン、企画プランの相談を受け付ける。来週月曜日に搬入予定の小児科病棟モビールの制作の段取りを仕切り直し、立て直しをはかる。その横では当日開催予定のちよだでのワークショップの最終的な準備と打ち合わせ、校正カンプが来ている情報誌「ヤサビのイト」のデータチェックも同時に進行している。そのような事態ではプロジェクトルームは修羅場と化す。緊張感は必要だが、このような時こそぴりぴり感をやわらげる笑顔と挨拶が大事。どのような時も無視をしたり、いらいらした空気を放出するととたんにうまく仕事がまわらなくなる。このような空気の中、学生はたくましくなっていく。
13:00発達センターちよだワークショップチームが慌ただしくも元気にプロジェクトルームを出発。スタッフ井木が並外れたぼけトーク(失礼!)でチームを引っ張る。残った私と泉でモビール作成のポイントをじっくり打ち合わせる。
14:30モビールの設置方法に不安があるため、私は小牧市民病院へ。途中ホームセンターに寄り、取り付け金具等を購入する。
15:00小牧市民病院につき、総務課に顔を出す。年度末の折、皆さんいそがしそうだ。脚立を持って小児科病棟に行くと、研究会メンバーの看護師さんが迎えてくれる。空き部屋になっている病室の前の壁にモビールフレームを設置し、取り付け方を検討する。壁の下地が石膏ボードとコンクリートの場合がある。天井材へは固定不可能で、接着剤で取り付けると破損の恐れがある。なおかつ現状復帰できる方法と落下の危険性を回避できる方法を模索しなければならない。既設の設備に手を加える方法はやさしい美術の真骨頂。「設置欲」がふつふつと湧いてくる。
16:50設置方法の検討で時間が思いのほかかかり、小牧市民病院を出発するのが遅れてしまう。
17:40約束の時間を10分遅刻して発達センターちよだに着く。すでにワークショップが終わり、ワークショップ後の反省と検討のためミーティングをしているところだった。今回、毛糸を使ったワークショップにより子どもたちの新しい創造性の発見につながったようだ。ミーティングでの議論は白熱する。プロジェクトメンバーから子どもたちの様子の報告を受けて、ちよだの職員伊藤さんから「自閉症」や「発達」という側面から考察を深めて行く。とても意義深い時間が過ぎて行く。
私から発達センターちよだの来年度の活動計画について、提案する。スタッフ井木が事情によりスタッフを外れるため、その後継者を探して来たが、ディレクターである私の力不足でそれをつなげることができなかった。せっかく築いて来たちよだとの交流を絶やすのは、あまりにももったいない。GPの補助で活動できる恵まれた環境を活かすことも大切だ。そこで来年度は9月までを発達センターちよだでの活動を休止し、10月から新たに活動を始めることを提案させていただいた。子どもたちの存在がまず最初にあるべきだ。そのための活動でなければならない。その基盤、資金運営態勢を整えるのは私の仕事だ。発達センターちよだの職員伊藤さんは「続けてもらう意志が聞けてうれしい」とおっしゃった。私たちにとって身に余るありがたい言葉だ。
スタッフ井木からちよだでの活動を広く伝える展覧会「どんどん だんだん」展の企画提案を行なう。5月に開く予定の展覧会はすでに子どもたちの活き活きとした写真をプロに委ね、展示パネルとして加工の段階に入っている。会場もおさえた。やさしい美術と発達センターちよだとの協働プロジェクトの在り様をしっかりと伝え、展覧会タイトルの通り、広がり成長するポジティブパワー全開の展覧会にすることを誓う。
19:00発達センターちよだを離れ、大学へ。途中閉店間際のパン屋さんに寄り、しこたま買い占める。
19:45モビールフレーム製作の作業を続行していた泉とプロジェクトルームで合流。まずは腹ごしらえということで買い占めて来たパンに食らいつく。ほどなくして発達センターちよだチームがプロジェクトルームに帰ってくる。私たちがパンを食べる間、ちよだのワークショップに使った道具などを手際よく片付け、さらに情報誌「ヤサビのイト」編集部の学生たちは校正の最終チェックに入る。どこまでも慌ただしい。皆で買って来たパンを食べ、しばし談笑。こうしたひとときが本当に楽しい。現場から帰って来て興奮さめやらぬ状態で皆が話すひとことひとことがまぶしい。
20:00すぎ、モビールフレームの製作に入る。この時点で徹夜になること必至だったのだが、情報誌校正を終えたメンバー、ちよだ関連の片付けを終えたメンバーが「手伝いますよ」と名乗りをあげてくれる。皆、疲れているのに、申し訳ないと思いつつ甘えることにする。
そこからはすごい集中力。ひとつひとつの作業は私自身が実演して見せる。最終的な完成形を想像し、工程のどの部分に気を使わなければならないか、説明をする。
全員全く休みを取らずひたすら作業に没頭する。作業中、悲壮感はない。手は淀みなく動いているけど、口もよくすべる。やさしい美術内でなぜカップルが生まれないのかなど、興味深い?話題満載のトークが続く。(ここはオフレコ)
23:30すべての工程を終えて、モビールフレーム120体が完成する。驚異的な早さだ。手伝ってくれた皆、ありがとう!
本当にありがたい。土曜日、日曜日。たまった仕事をこなす。皆のおかげだ。