Nobuyuki Takahashi’s blog

2009年 5月 31日のアーカイブ

藤井健仁の鉄面皮

2009年 5月 31日

今日開催予定だった「子ども療養環境フォーラム研究発表会」。私は座長を頼まれていたが、インフルエンザの影響で直前に延期になり、オフ日となった。昨日の香川県庵治町での住民説明会はたった30分あまりのプレゼンテーションだったが、考えあぐねた末の内容だったのでひどく疲れが残っていた。朝と夕方、子どもを散歩に連れて行く。ひさしぶりにのんびりとした時間だ。
夕方、娘を連れて、GALLERY Mに行く。私の古くからの友人で鉄の彫刻家藤井健仁の個展だ。鉄面皮のシリーズはブッシュ、麻原彰晃などのワイドショーをにぎわす面々を鉄を熱してたたき出す方法で制作したものだ。彫刻界では邪道とまでいわれる「お面」を彼は敢えて制作している。その途方もない作業と労力は情熱といえばそれまでだが、憎しみ、嫌悪、愛、慈しみがないまぜとなった営みだと彼は言う。殺人に値するほどの労力、処刑人としての愛。
私も専門を彫刻としているが、彼の表現とは全く方向性も手法も異なるものだ。しかし、今日ふと「意外と近いのかもしれない。」と感じた。というのも、私のテーマと同様に彼も事物の表面と中身についての問題意識が強く働いていると思えたからだ。仮面は事物を見えなくすることもあり、中身を象徴的に映すこともある。そうした表面を追いかけることで、かえってその背後にある不可視の領域に迫って行くことができる。その歪んだ姿勢に共通点を見出した気がしたのだ。ギャラリーの空間は洗練されていて、藤井の表現をくっきりと浮かび上がらせていた。