Nobuyuki Takahashi’s blog

2009年 9月 2日のアーカイブ

卒業生のモチベーション

2009年 9月 2日

福井奈々恵の作品

福井奈々恵の作品

やさしい美術のメンバーは在学生のみではない。というか、卒業生の活躍が在学生を牽引しているほどに、パワーがある。
例をあげれば、十日町病院に今回「雪下駄オーナメント」を制作した、福井。前回の大地の芸術祭では絵はがきを職員さんに描いてもらい、それを病室内の患者さんたちに手渡すワークショップを企画した。福井は昨年4月に就職しており、仕事を抱えながらの参加である。プレゼンテーションの資料準備もツボをおさえてあって、作品の質感も高い。在学生は大いに刺激を受けたのではないか。
菅はえんがわ画廊の参加アーティストとしてペインティングを制作。菅もすでに数年前に卒業している。初めて足助病院に向かう車中で「実は私、お年寄りとお話しするのが苦手なんです」と告白されたのを思い出す。ところが、その後、毎月足助病院で長期に入院されている方のいる病棟に通い、そこで患者さん達と語らいながら絵を描く、ということを約一年半繰り返した。アーティストが日常に入っていく斬新な試みだ。菅は仕事をしながらも、いざという時に手伝いにきてくれる。明日から行く大島の土づくりワークショップにもいち早く手を挙げてくれた。
浅井は今日、プロジェクトルームに来てくれている。本学を卒業後、名市大の大学院に入り、デザインの勉強を続けた。卒業後は静岡のある店舗を任せられる店長を務めている。静岡から来ているにも関わらず疲れた顔もせずにディサービスちよだの造形ワークショップのミーティングに参加している。
学生には学生の事情がある。単位取得が至上目標であるが故に、私たちのような相手のある社会活動としてのプロジェクトではスケジュール調整が困難を極める。基本は先方の予定に合わせるべきところが、なかなかそうもいかないのだ。また、個々のモチベーションの高さにおいても在学生に比べ、卒業生の方が総じて高い。なぜならば、時間も生活も学生時代より厳しい状況にありながら、「自分が何と向き合い、何をすべきか、何をやりたいのか。」というテーマに対して貪欲なのだ。チャンスがあれば、すぐに飛びつく。やってみる。そうした若者の特権のような行動力は在学中は「次に」「めんどくさい」「予定入るかもしれないから」などとなんとなく甘えてしまう。卒業して自分で働き、生活してみてわかる。チャンスに「次」はないのだ。体力も潜在的には学生時代の方があるに決まっている。にもかかわらず健康管理は学生の方がずさんで、ドタキャンも多い。自分がチームワークの中でプライドを持って仕事して行けば、自分が土壇場で抜けてしまったら、どのような事態になるのか「想像」することができる。学生にはその責任がない、ないはずはないが、感じられないのかも。
大学には今、モチベーションを高める教育プログラムが求められている。やさしい美術が現代GPに選定されているのは、このモチベーションを高める、そして地域活性化の貢献が主な選定理由だ。私たちの取り組みには大学院生がいないが、卒業生やスタッフの活躍が学生の力を引き出す大きな力となっている。頼もしい限りだ。