Nobuyuki Takahashi’s blog

2009年 9月 8日のアーカイブ

妻有 まぼろしのカレー

2009年 9月 8日

絵はがきワークショップに参加いただいた皆さん

絵はがきワークショップに参加いただいた皆さん

6:00 起床。霧雨が時折降る。朝食後は皆でオープンに向けて準備を進める。私はトイレ掃除と板間の雑巾がけ、庭の草むしりをする。2000人を越える人たちがこのやさしい家を通り過ぎたのだ、汚れないはずはない。しっかり清掃。
私たちは、来場者があると、まず、プロジェクトの主旨とやさしい家の位置付けを説明する。窓から見える十日町病院を指差して説明すると、このやさしい家が単なる作品展示でないことが判っていただける。やさしい家は病院と地域の間を取り結ぶ中継地点。来場者はワークショップや参加型作品に参加することで、間接的に病院と関わることになる。
ヒンメリの製作用に藁を提供していただいたAさんが奥さんを連れてやさしい家にいらっしゃった。私はAさんのお宅でいただいた曲がったアスパラガスの味が忘れられない。お住まいのある津南町は新鮮な野菜で有名だ。Aさんは藁細工の研究者にして職人、そして農をこよなく愛する農業者である。Aさんからいただいた藁は金色に輝いている。凛としていて、芯が強い。ヒンメリワークショップはAさんからいただいた藁と十日町病院高橋事務長のお知り合いからいただいた藁があったから実現した。完成したヒンメリをご覧になって、うれしそうなAさんご夫妻。こちらも自然と笑顔がこぼれる。
Aさんは「作品を作る時はイメージしたり、イメージを描いたりするんですか?」と問われ、「イメージできないものはかたちにできませんね。イメージすることは制作する上でとても大切です。」と答えると、Aさんは「農業も同じです。良い野菜がたくさん採れるイメージをして、そのために何をするかを決めていくんですよ。」とおっしゃった。天候にも左右されながらその都度イメージを修正して完成に向かう。1年一回のやり直しのきかない営み。農業の厳しさと楽しさ、尊さをAさんのお話をうかがいながら感じる。

窓辺でアサガオを見る入院患者さん

窓辺でアサガオを見る入院患者さん

13:30 十日町病院に行き、高橋事務長、井澤さん、泉澤さんと大地の芸術祭会期後の搬出や将来的な可能性について話し合う。会期が終わったからと言ってすべての作品を一度に搬出するのではなく、段階を経て作品の特性に合わせて搬出していくことで意見が一致する。一部今後末永く使っていただく作品もある。
15:00 スーパーマーケットに食料の買い出しに行く。いよいよ皆さんお待ちかねのカレーを皆にごちそうするためだ。カレーといっても私の作るカレーはインド人の友達から教えてもらった本格派。市販のルーは一切使わない。香辛料のみで作る。
16:00 仕込み開始。米を研ぐ。タマネギを4玉みじん切り。ニンニクとクミンシードをギーとサラダ油で炒め香り出ししておいてそこへタマネギを加える。このタマネギがカレーのペーストのメインとなる。
鶏の骨付き肉を塩こしょうで下味をつけてカリッと炒めておく。さて、香辛料類はターメリック、コリアンダー、ガラムマサラ、マンゴーチャツネ、唐辛子、ブラックペッパーなどなどをヨーグルトで溶いておく。あらかじめ用意しておいた、タマネギの炒めたペースト、炒めた骨付き肉、茄子を鍋に投げ入れ、香辛料を溶いたものとトマトピューレを加える。

自分で言うのもなんだが、ものすごくうまかった

自分で言うのもなんだが、ものすごくうまかった

人参3本を細切りにきざんでおく。たれはミーナッツの砕いたものとおろしニンニク、ショウガ、砂糖、酢、ごま油、そしてナンプラー。食べる直前に人参にぶっかけてざっくり混ぜ合わせて食べると最高においしい。
ささやかなカレーパーティー。約束がやっと果たせた。でも食べたのは泉と川島だけなので、今度は学校で作って振る舞うからね。
12:00 仲良くなった居酒屋のマスターがお店のお客さん一人を連れてやさしい家に遊びにきてくれる。料理のこと、子どもの頃の遊び、アートのこと、この妻有地域のこと、いっぱい語り合った。マスターが連れてきたお客さんから「アートはどのように観たらいいのですか。」という真っすぐな質問がとんできた。「基本的にはどのように観てもいいんですよ。」という話をした。
妻有に来て、作品を観に行くと地元住民の方々が作家のことを話してくれたり、作品の制作に携わった方から苦労話が聞けたりする。それが、また本当にうれしそうにお話されるのだ。私はその光景を見て、この人たちは作品の最高の理解者だな、と思った。ここではそんな場面がそこここで起きている。
2:30就寝

マスターが蟹を持ってきてくれた!

マスターが蟹を持ってきてくれた!