Nobuyuki Takahashi’s blog

2009年 10月 4日のアーカイブ

大島 交わす言葉

2009年 10月 4日

ガラスは天然のサンドブラストがかかっている。

ガラスは天然のサンドブラストがかかっている。

7:00起床 いい天気で今日も鳥のさえずりで目が覚める。朝日を見るには遅すぎた。
朝食前に浜辺に行き、徹底的にビーチコーミング。プラスチックの容器を10個ほどとかなりの量のガラスの破片を拾い集める。ガラスは長い時間海砂にもまれてマットな肌合いに変貌している。長石と陶片も集めている。集めたものは大島から発信する作品やワークショップの素材になる予定だ。
途中から泉もビーチコーミングに参加。
気がつけば、8:30。面会人宿泊所に戻り、トーストを食べる。
午前中は何人かの入所者の方々に会えるかなと考えて、島内を隈無く歩き回る。
小学校は島の南部にある。グランドにはヘリコプターの着陸のサインが描かれている。子どもたちの声が聞こえない学校ほど寂しいものはない。重い気持ちを引きづりながら小学校を後にする。
しばらく歩いて行くと教会の前で入所者の脇林さんに会う。今度はマクロレンズをつけたカメラで昆虫を撮っていた。生活=写真 という構図が頭に浮かぶ。脇林さんは写真を「撮る」ことにより世界と向き合っている。
丘の上にある入所者自治会長の森さん宅を訪ねる。森さんはちょうど引っ越しの荷物整理の真っただ中だった。それでも私たちを見かけると待ってましたとばかりに話に花が咲く。
山の中腹まで畑があったこと。今では畑の面倒をみる人は3、4名だと聞く。立派な松の木が島全体を覆っていたが、今は松食い虫にやられてめっきりすくなくなってしまったそうだ。この10月中に新しく立てられた住居棟に移るそうだが、自慢の盆栽を置く場所がない。いくつかは山に返すとのこと。
盆栽を見せてもらう。半分ほどは預かった盆栽だそうだ。100年経っているものもある。私は森さんの盆栽を接写で撮りまくった。ファインダーにカマキリやバッタが入ってくる。夢中にシャッターを切る。
森さんのお隣に住む入所者の方ともお話しする。畑にニンニクを植えて帰ってきたそうだ。収穫は来年の6月。今頃から植えるとは知らなかった。
12:00 あっという間にお昼。昨日と同じようにうどんを茹でて食べる。毎日食べてもいける。冷凍麺を茹でるだけだが、地元住民の間でもポピュラーな食べ方だそうだ。

ひっぱられながら立っている電信柱

ひっぱられながら立っている電信柱

13:30 面会人宿泊所を出て、今度は北側を練り歩く。泉と川島が入所者の一人とお話が弾んでいるようだ。私は入所者自治会副会長の野村さんと出会い、お話する。

野村さんの話ではこの長屋づくりの寮の構成は昔から変わっていないのだそうだ。最初は12人ほどの共同部屋だったそうだが、それが建て替えられるごとに5、6人、2、3人と細かく別れ、独身寮、夫婦寮ができるころ、現在の形におちついたようだ。15寮をギャラリーにして行く時に、空間の使い方を迷っていたのだが、入所者の皆さんからうかがった話から心が決まった。青松園ができて今年が100年。その100年を示す古い遺構や資料はこの小さな離島では残すすべがなかった。しかし、現存する入所者の皆さんが暮らしているこの環境こそ、100年の積み重ねの現れなのだ。私たちはもし15寮がギャラリースペースとして使うことが叶うならば、この大島の暮らしが映し出される寮の空間を極力活かした活用にしたい。
野村さんとゆっくりとお話ができたのがうれしかった。帰りがけに「今度はいっしょに一杯やろうか。」とお誘いをいただいた。心の壁が一枚ずつ溶け行くような開放感。やさしい美術の活動はこの小さな積み重ねによろこびを見出す活動だ。
面会人宿泊所にもどり身支度をする。福祉室に挨拶をして、官用船まつかぜに乗ろうと桟橋に向かうと、なんと、船がまさに出航しているではないか!私は何度も時刻表を確認したが、どうも冬仕様の時刻表に変更したようだ。

庵治に向かう船から夕日を見る。

庵治に向かう船から夕日を見る。

高松行きは最終が行ってしまったため、庵治行きの船に乗ることにする。
大島の職員さんがたくさん乗ってくる。これに比べて高松行きの寂しいこと。私たちのみという日も少なくない。
真っ赤な夕日を拝みながら庵治町へ。
20分ほどで庵治の船着場に到着する。庵治町での説明会で来たことがあるが、大島側から来たことはなかったので新鮮だった。
18:00 バスで40分高松駅に向かう。途中であまりにもお腹が空き、商店街のうどん屋さんに向かう。
19:40 高松駅から名古屋に向かう。
大島から高松に戻ると、「降り立つ」という感覚がする。同地平に大島があるとは思えない。海を渡ることによって得られる不思議な感覚だ。この感覚をいつまでも色あせないものとしたい。そんなことをぼんやりと思った。

寮を結ぶ長大な廊下。

寮を結ぶ長大な廊下。