Nobuyuki Takahashi’s blog

2010年 2月 26日のアーカイブ

発達センターちよだ 今年度最後のワークショップ

2010年 2月 26日

10:00 3月6日から実施する大島焼ワークショップの打ち合わせ。昨日も打ち合わせをしたが、今日は昨日都合がつかなかった学生に説明した。時間をたっぷりと使い、根気よく何度も、何に接しても揺るがない忍耐がディレクターには必要だ。

枠には透明のアクリル板が差し込まれている

12:00 発達センターちよだのワークショップを行う学生、教職員混成メンバーがプロジェクトルームに集合。
12:30 大学を出発。車中では冬季オリンピックフィギャースケートのことでもちきり。携帯の電波が悪く、レンタカーのAM放送を聞く。
13:00 大盛り上がりのところ、発達センターちよだに到着。ピンクのつなぎに着替えようとしたところ、スタッフの赤塚から「5着しかないので誰か普段着でお願いします。」そりゃ、あーた今言っても…。私しかいないでしょうが!ま、私の服はスーツ以外は絵の具がついているので、どうということはない。
部屋にブルーシートを敷き、透明のアクリル板を支持体とした透明絵画のセットを設える。絵の具もメディウムをたっぷりと混ぜて定着しやすく加工しておく。
アクリル板の支持体は見事な出来映えだ。加工作業を請け負った木工室の工房職員榊原さんの腕も確かだが、考案と加工作業に携わった赤塚の努力に感服。ワークショップの実施時間はわずかだが、その背景には膨大な準備の時間、労力、却下されたアイデアが積累々としているのだ。
この「絵画の取り組み」は発達センターちよだ職員、パート職員、ボランティア、そしてやさしい美術の活動によって支えられている。
14:30 パート職員とボランティアスタッフの方々と挨拶を交わし、子どもたちを迎える準備に入る。
15:00 子どもたちがお母さんの手に引かれてやってくる。遊んだり、言葉をかけたりしながら、雰囲気を作っていく。子どもたちには基本的に1人ずつ担当者がつく。その方が、取り組みの後も子どもたちの変化や成果の報告がしやすい。一緒に楽しむことと責任を持って子どもたちをみることの両立が大切だ。私は毎回参加できていないが、赤塚をはじめ、常連のワークショップチームのコミュニケーションは目を見張るものがある。
おやつの時間。肉まんを皆で食べる。歌を歌う。人が生きていく上での大切な営みを皆で楽しむ。楽しみ方のルールも発達障害を持つ子どもたちに教えていく場でもある。私は男の子3人に人気。いつも女性が多いからだろうか、男の人が来るとワイルドな遊び方を仕掛てくる。おっと、手加減もおぼえなくちゃねー。
さて、おやつが終わり、お着替えをして「絵画の取り組み」に入る。着替えさせるのはなかなか大変だ。逃げ回る子どももいる。でも着替えることで折り目切り目がつくのは確かだ。
最初は透明な画面をどうして良いかわからない、という子どもがいたが、平滑でクリヤーな画面に絵の具がつくと一気にのめり込む子どもも見受けられた。
いつもは制作の時間が短かった子どもが30分近くも絵の具を塗り続けることがあったり、「いつも(画用紙ではなくて)透明だったらいいのに。」とコメントも聞くことができた。今後成果の結果を見て分析と考察が必要だが、支持体の設えが私たちの取り組み方(つまり、絵画と向き合う、イーゼル型)を想定してしまっているが、子どもたちの障害や個性的な指向性に柔軟に対応できるものを開発する必要があるかもしれないと思った。寝転がって描く、上を歩く、トランポリンをしながら描くなどなど…描く状況に子どもたちのルールはない。いずれにしても、これだけの完成度を持った支持体ができたことで初めて見えてきた問題点である。
16:30 子どもたちの取り組みが一区切りつき、片付けをしながらお母さん方が迎えに来るまで力一杯いっしょに遊ぶ。布に乗せてひっぱりまわす、滑り台を転げて遊ぶ、手をつないでトランポリンを飛び跳ねる。
17:00 お母さん方が子どもたちを迎えにやってくる。活動報告会に参加いただいたお母さんもみえる。今日の取り組みの様子を説明し、子どもたちの様子をお話しする。実作品を見ておどろいたり、とまどったりで鑑賞の時間は実に楽しい。私たちの関わりは一月に一度きり。発達センターちよだの職員さん、お母さん方は毎日の中の1日だ。できる限り想像力を働かせ、お母さん方の声にも耳を傾ける。
私から来年度も何とか取り組みを続ける意向を皆さんにお話しした。どのような形になるかこれから検討しなければならないが、継続し、関わり続けることで見えて来ることはたくさんある。
18:30 片付けを終え、今日のケース(ケーススタディー、反省会)を行う。それぞれが受け持った子どもたちの様子を報告する。場合によっては子どもの障害と照らし合わせて制作の様子が語られていく。他者の中で起きている変化を客観的に見ることは難しい。もし感じ取ったとしても、関わった人同士の間で起きたことはまた、他者には伝わりにくい。人と人がつながりを持つこと。ここにも普遍的で本質的なテーマが横たわっている。
19:00 発達センターちよだを後にする。近々親睦会にも誘っていただけるそうだ。
20:00 プロジェクトルームに到着。私は心を切り替えて明日からの大島行きの準備に入る。