Nobuyuki Takahashi’s blog

2011年 1月 19日のアーカイブ

臨床するアート 東京セッション

2011年 1月 19日

アーツ千代田3331の外観

この日、アーツ千代田3331にあるエイブルアートスタジオにて「臨床するアート」東京セッションで講演を行った。コーディネーターは慶応義塾大学のグローバルセキュリティー研究所/教養研究センター特別研究講師の坂倉杏介さん。
全6回行われるセッションの初日を仰せつかり、約1時間の実践報告とその後の1時間で参加者の皆さんとディスカッションした。
まず驚いたのは、参加者の皆さんの関心の深さだ。発表をしている間にも会場全体からまなざしがまっすぐ自分に向かってくるのがわかる。参加者の多くは医療関係者や医療福祉の現場と密接に関わる様々な仕事をされている人々だ。募集人数が満たされ参加募集は早々と閉め切られたそうだが、それほど人が集まるのは、ひとえにエイブル・アート・ジャパン、たんぽぽの家のネットワークの広さ故だ。そこでお話しする機会をいただいたこと、大変光栄である。
そして印象に残ったのは、参加者の皆さんから本質を射抜く鋭い質問が寄せられたことだ。それは私が発表の時間の関係上、割愛した教育プログラムとしての運営についてや、運営資金についてなど、つまりはこの質疑応答によって私が補わなくてはならないところが引き出されたかたちだ。また、すでに私と同じように現場と連携して発展的に活動している者が抱える共通課題、たとえば医療福祉にアートデザインが存在する根拠はあるのか、地域や運営形態の異なる全国に散見される取り組みが一つのムーブメントになりうるのか、またその活動のうねりが社会にどのような影響を与え、制度上の変革にまで至ることがあるのか、そうした疑問や質問の声があがった。どの課題も今すぐに解決できるものではないが、その問題意識が共有できることがなによりも意味がある。そうか、なるほど。今回のセッションのねらいの一つが見えた気がした。
2時間のセッション終了後も多くの方々が会場に残り、私に話しかけてくださった。2009年新潟県立十日町病院の傍らで運営した「やさしい家」に来ていただいた方もいた。私が取り組んできたことが人々の心に少しずつだけれど何かをとどめている、その臨場感に満たされた。できればそのまま二次会に行き、車座になってとことんディスカッションするというのもありじゃないかなとさえ思った。きっと会場にみえた皆さんも同感じゃないかな。
お集まりいただいた皆さん、ありがとうございました!

会場となったエイブルアートスタジオの片隅に置かれた使い込まれた筆や絵の具たち