Nobuyuki Takahashi’s blog

2011年 3月 1日のアーカイブ

やさしさの距離感

2011年 3月 1日

一般論、常識的で、不特定多数の人に受け入れられる「やさしい」という感じ。
言葉をかえると「癒される」感じのこととも重なる。
ハーフトーン、曲線、暖色系、クジラ、小鳥、子ども、笑顔…。
一方でその人と一対一で向き合った時の「やさしさ」。「ばかやろう!」「何くさってんだ。」「またくるぞ。」なんて素っ気ない言葉になる時もある。心をこめて正反対の行動に出ることもある。その人だけが受け取ることのできる感情の塊。このような様子を端から見れば「なんてひどいヤツだ」「やさしさの微塵もない」と揶揄されるだろう。でも、その人との間にだけ成立する言葉、眼差し、素振りは実際に存在する。
やさしい美術の活動をしていると、この「やさしい」のかたちの有り様に揺れる。多くの人々が行き交う場所での展示があれば、たった一人の患者さんのために作品を作ることもあり得るのだ。その絶妙な距離感が私たちの感性を育んでくれる。「やさしい美術」の方法、形式はけっして規定できない―。
学生から「やさしい美術のやさしいって何ですか。」という質問があった。いろいろと言葉を尽くすが、やっぱり説明できないでいる。
アーティストの河合正嗣さんにもそういえば同じ質問をされたっけ。その時もその断片をあぶり出すことができても答えはでなかった。正嗣さんは「そんなに簡単に説明できないことですよね。」と言った。正嗣さんは答えを探し続けることが答えだと考えていたようだ。