Nobuyuki Takahashi’s blog

2011年 4月 1日のアーカイブ

「瓦礫」と言わないで

2011年 4月 1日

被災地で支援活動をされているあるNPOの代表者の語りがラジオに流れる。
「被災地は瓦礫でいっぱい、なんて言わないでください。塵や瓦礫じゃないんです。そこで生きてきた人たちの思い出や過ごしてきた時間が刻まれているんですから―。」
木っ端みじんに破壊された家屋、日用品、衣類、そして人々…。それを一緒くたに「瓦礫」と呼ぶにはあまりにも寂しい。原形をとどめず、断片となっても人々の暮らしの記憶をしかと宿している。現場で従事している人々はその重さをひしひしと受け止めているのだろう。人々の生きてきた証。向き合っているものがなんであるのか、まさにそこにいる当事者の言葉だと思った。

めちゃくちゃになった町にたたずんだある中年の男性がインタビューにこう答えていた。「ここが一番なんです。ここに暮らしたい。」
慣れ親しみ積年の念いが詰まった場所。すべてが流され失われてもそこに這いつくばってでも生きて行きたい。そこに暮らしてきた人だけにしかわからない心情だ。

昨日、新潟県立十日町病院に電話した。3月中に妻有の人々に会いに行こうと計画していたが、地震のため断念した。経営課の井沢さんの相変わらず快活な声に安心する。聞けば塚田院長は現在派遣医師として被災地の石巻で診療にあたっているとのこと。「こんな時だからこそ、やれることをやらなきゃね。」と井沢さんはおっしゃる。十日町は中越地震を経験している。その恐ろしさと人々の支援の温かみを知っているだけに、その念いは一入だろう。私は「絵はがきワークショップやりませんか。」と呼びかけた。2006年のこと、福井奈々恵が普段心の内を伝えることのない病院職員から残暑見舞いの絵はがきを患者さんに届けるワークショップを実施した。集まった絵はがきは300枚。275床のすべての患者さんのベッドサイドへ絵はがきを提供した。その後やさしい美術プロジェクトの活動に刺激されて十日町病院の職員らが院内のアートに取り組む「ミナーレ」(妻有弁で見てくださいの意)を立ち上げた。 今度は被災地に向けてメッセージをおくりたい。