Nobuyuki Takahashi’s blog

2011年 5月 6日のアーカイブ

足助病院 感じたことからコツコツと

2011年 5月 6日

ある患者さんが大事にしていた詩集

毎年恒例の足助病院訪問見学会。病院が立地する地域を訪ね、入院している病院利用者を対象にインタビューを行う。
9:00 春日井駅集合。遅刻者はなし。体調不良で二人が欠席。私の自家用車とレンタカーの2台で足助町へ向かう。
この数年は足助の町並みを歩いてきた。宿場町の面影を色濃く残し、うなぎの寝床のような長い蔵は町に独特の景観を与えている。ふと、今年は足助城に行ってみたくなった。足助の町から足を伸ばして車で10分。車で走るには躊躇するほどの急斜面を行く。足助城から見た足助の町並みは箱庭のように儚い。
足助城を見学した後は下界に降りて足助の町並みを歩く。町一番の高台にあるお寺から町を俯瞰する。山上とは異なる趣。ふと目眩がする。林立する建物を見ていると、被災した七ヶ浜町の光景がフラッシュバックする。いかなる存在も一瞬にして藻屑となることがこの自然界では、ある。いつも見ていた風景はいつもの風景ではないように思えた。今目の前に存在しているこの光景を驚きと感謝をもって迎えたい。
14:00 足助病院に入る。今年度から新病院建設のため、工事が始まっているが、まだ大きな変化はない。
14:30 それぞれ2〜3名ごとに分かれたチームが病棟に散っていく。今年は病院サイドの計らいで全病棟に通していただけることになった。ここ数年はA棟2階とB棟の1、2階に限られていたが、今年はA病棟3階でもお話をうかがうことができた。初めて足助病院を訪れたメンバーは緊張で表情がこわばってしまっている。無理もない。初対面でお話しするのでさえ、構えてしまうのが普通の反応だ。さらに病室はプライベートな空間。寝室にどかどかと乗り込んで行くようなうしろめたさが首をもたげる。それでも、私たちはベッドの傍らに行くことを止めない。
インタビューを続ける。家族でもない、医療従事者でもない私たちに、家族にも話したことがないことを語ってくれたり、耐えられない苦痛を吐露する方もいる。寝食を共にし、我慢しあっている人同士では話せないことがあるのだ。過去の記憶を話す方もいる。お年寄りの多い病院では人生の振り返りの機会にもなっている。鮮明な記憶をたどる人々の表情は明るい。一方私たちやさしい美術のほうは、入院している病院利用者と接することで、湧き出てくる自分自身の感情と向き合う。未解決な課題が感情と相まって自分に向かって押し寄せてくる。実際のところ、整理のつかない感覚を私たちは持ち帰ることになる。その感覚を忘れてしまわないうちに、記録しておいてほしい。心のどこにも位置づけることのできないそれを、放置しないでほしい。そこには自分が取り組むべきことの源泉が眠っている。