Nobuyuki Takahashi’s blog

2011年 6月 9日のアーカイブ

宮城県七ヶ浜 第二弾ワークショップ1日目

2011年 6月 9日

9:00 武道館に入り、ワークショップの準備を進める。津波で流されてしまったお宅の土台の木を製材した板と名前が印刷された原稿とを組み合わせて行く。板の大きさと名前の文字数、画数でバランスをとるのがポイントだ。
10:00 前回のワークショップで参加してくれた七ヶ浜中学校美術部の生徒さんらが集まってくる。レスキューストックヤード、地元のボランティア、関西学院大学の学生らで参加者は総勢30名ほどだ。
レスキューストックヤードの石井さんから参加者にむけて「仮設住宅へまごころ表札を届けよう」の概要の説明。震災後、当地ではどのような経緯があって、表札の製作に至ったのか。そのねらいを明確にすることで参加者の集中度を高めて行く。
前回と同様、作業に没頭する姿を多く目にする。たくさんの人々の手で、丁寧に、そして誠心誠意描かれていくことが大切なワークショップ。美術部の中学生らは一通り作業の流れがわかっているので、手慣れた手つきでぐいぐい描く。デザイン性が高い名作が生まれる予感。
七ヶ浜中学校は天井が落下したり、壁面が崩落するなど甚大な被害があり、生徒らは仮設の校舎ができあがるまで、他校に通っているそうだ。元気で明るい子たちなので彼女らがおかれている厳しい状況を忘れてしまいそうだ。表札プロジェクトを担当しているレスキューストックヤードの松浦くんは地元のボランティア。震災以降はどんな小さな余震でも身が凍るようだという。小さい揺れがあっというまに大きな揺れに増幅する、そんな恐怖心に苛まれている。震災後に現地に入った私たちにはその恐怖を捉えきれない。
12:00 カップ麺とおにぎりを参加者全員でほおばる。休憩をとる人がほとんどいない。完成させたいという気持ちが先行しているのだろう。休みをとるよう呼びかけても、聞こえていないのかと思うほど集中している。
作業が予定よりも進み、午後は少し時間に余裕ができたので、製作年月日を記した刻印づくり、焼き印押しなどの周辺の作業も同時に進めて行く。特に焼き印押しは参加者に人気だ。一枚一枚の表札に「七ヶ浜 2011.3.11」が穿たれて行く。
15:00 参加者同士、今回のワークショップで感じたことを共有し、解散。
前回の七ヶ浜行きで同行したメンバー上田晴日にガイドを任せ、はじめて七ヶ浜に来たスタッフ林、村田、原嶋を連れて菖蒲田浜に行ってもらう。一方私は今後、七ヶ浜に行き来する際に高速道路を無料で通行するため、ボランティアセンターと役場に行き手続きを済ませる。役場で待機している職員さんも疲れが見える。様々な声が寄せられる中、対応に迫られる場であるだけに苦労も多いことだろうと想像する。職員さんも被災者。
私は、4月末に七ヶ浜に来た際に募集して集めた絵はがき「ひかりはがき」を340枚持参して、災害に遭われた方々に手渡した。それから一月の間になんと400枚の「ひかりはがき」が集まった。私は独り仮設住宅に向かった。「ひかりはがき」を仮設住宅で手渡すことができないかと。
仮設住宅は整然とならぶ。玄関が向かい合わせになっていないので、各ユニットが玄関に対して背をむけているような印象だ。洗濯物が干され、煮炊きの香りがどこからともなく漂ってくる。子どもたちの泣き声や笑い声、食器の重なる音…。生活は始まっている。
玄関の軒先で山菜を干している方がいる。入居したAさんに声をかけた。お届けした表札についてたずねると、多くの人の手で作られていることをとても喜んでいただいているようだった。Aさんは震災後のつらかった日々を訥々と話しはじめた。その中でも特に印象に残ったエピソードを記しておきたい。
・自分の家が流されたことよりも自分が生まれ育った実家が流されてしまったことが何よりも悲しい。涙もでない。
・浜に嫁ぐと知った父が猛反対した。結局しぶしぶ結婚を許した父から申し渡されたのは「海を甘く見るな。波は山も登ってくる。」 その通りになってしまった。
・こんなことだったら津波が来る前に死にたかった、というお年寄りは多い。仮設住宅にいる身分で葬式は出せない、出したくない。
・私たちよりももっと大変な人たちがいる。知り合いや親戚はもっと大変は状況におかれている。手伝いに行ってあげたいほど。それもできない。
・砂利道(仮設住宅の周りは舗装されていない砂利)は杖を持つ身では危なくて歩けない。
・仮設住宅にあがる際のちょっとした段差が足があがらない。ユニットバスのお風呂の湯船の高さまで足があがらないのでお風呂に入れない。
1時間半ほど話し込んだだろうか、その間に何人もの方が入れ替わり立ち替わりでお話をうかがった。足湯では長い時間お話しすることができなかったから、じっくりとお話を聞くことができたのは収穫だ。「なってみなければわからないことよ。」とおっしゃった言葉が突き刺さるように感じた。ついぞ、「ひかりはがき」をお渡しするタイミングを失ってしまう。
きずな館はレスキューストックヤードが派遣しているボランティアバスが着き、一時的に人数が倍に膨れ上がる。ミーティングの場所がないのでしかたなくレンタカーの中で反省会。
22:00 就寝。