Nobuyuki Takahashi’s blog

入賞 おめでとう!

はなのはなし/泉麻衣子/新潟県立十日町病院にて

はなのはなし/泉麻衣子/新潟県立十日町病院にて

泉麻衣子がASYAAF(asia student & young artists art fair)に参加し入賞者7名の一人に選出された。
泉はやさしい美術プロジェクトに1年生から参加し、卒業後はスタッフ兼アーティストとしてプロジェクトを支えている。
もう少しASYAAFについて説明しよう。
ASYAAFとは世界11ヶ国105の大学で選抜された学生及び若手作家 777名、約1500作品を一挙に展示するマンモス展覧会で、朝鮮日報社と文化体育観光部主催のもと、8月6日から同月17日までの間、韓国ソウル市のソウル駅旧駅舎内で開催された。
規模と多様性で前例を見ない今回のASYAAFに対して、留学中の作家を含めた韓国、日本、台湾、シンガポール、インドなどアジア5ヶ国の若い画家達に加えて、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、オ ランダ、 ニュージーランドなど欧米6ヶ国、総勢2050名がポートフォリオによる厳正な事前審査を受け、選ばれた有望な現代美術作家らが洋画、東洋画、彫刻、 メディアアートなど幅広いジャンルの作品を一同に発表した。
泉は立ち居振る舞いに現れるアーティストらしさ、エキセントリックな強さを見せつけるアーティストではない。むしろ、静かに佇み、話口調はふんわりと柔らかく、おとなしいタイプである。でも、あなどってはいけない。彼女の空間に向ける眼差しは誰もがおいそれと届くようなものではない。無味乾燥な病院の空間にもわずかな壁に遺る痕跡、時間とともに変化する光、柱にある凹みや配線のダクトなど、コミットする微細なきっかけを見逃さない。その微々たる空間の調子をうまく利用して泉は作品をつくる。ある時は自作の一輪の花が空間の色調に変化を与え、ある時は空間との関わりを人々の関わりまでに拡張し、ワークショップに発展させる。一点に没入するのでなく、どこまでも浸透していく表現なのだ。
アートフェアの参加は泉の制作姿勢からすれば困難が伴っていたと思う。泉の作品はそこに空間が在ってこそ成り立つインスタレーションなので、作品本体を品物として扱うアートフェアには明らかに向かない。本人が現地に行けず展示作業を現地スタッフに託すため、苦労して展示指示書を作成していた。そうした指示書でアーティストの意図する世界観を伝えなければ、作品は本来の魅力を発揮できないであろう。今回の展示を直接観た者によれば、比較的良いコンディションで展示されていたようだ。
ASYAAFの入賞者3名に贈られるのはビエンナーレツアーだ。500万ウォンの賞金でシドニービエンナーレ、光州ビエンナーレ、上海ビエンナーレ、シンガポールビエンナーレ、横浜トリエンナーレのうち3ヶ所を選び2週間程度のツアーを光州ビエンナーレのオフィスが手配してくれている。
泉さん、おめでとう!ツアーを何処に行くかきっと迷うだろうけれど、いい経験になると思うよ。気をつけていってらっしゃい!