Nobuyuki Takahashi’s blog

境目

灯りと自然光の境目

灯りと自然光の境目

チベットをヒッチハイクで旅行した時だ。高山病には至らなかったが、砂地にスタックしたジープをチベット人と一緒に押した。酸素は平地の半分ほど、さすがに息がきれる。そして走り続けるジープの中で夜を迎えようとしていたとき。走る方向からは月がゆっくりと地平線からのぼってくるのが見える。ふと振り返ると太陽がまさに沈もうとしていた。この時ほど一日の終わりを感じたことはない。これ以上そぎ落とすことができないほどシンプルで、そして美しかった。
ネパールを旅していた時のことだ。カトマンドゥの安宿に泊まり、夕焼けをぼんやりと見て楽しんでいた。陽は沈み、空はゆっくりと紺からより深い紺へ、そして漆黒に向かっていく。視界を真上にとると東から西へ高密度なグラデーションが楽しめる。私たち人間はこの境目を「昼」と「夜」に分けてしまう。その境目はとてつもなく滑らかに推移して行くグラデーションだ。人がつくる境界なんて精度の悪いフィルターから見た世界で、浅く、薄っぺらだ。それは全身を使って感じれば誰でもわかること。
そんなこと、しばらく考えていなかったな。いそがしさにかまけて全身を感覚のアンテナにして解放してやることを忘れていた。
さきほどのエピソードとは情景は異なるけれど、境目のグラデーションを感じた一瞬をカメラにおさめた。

明るさと暗さの境目

明るさと暗さの境目