Nobuyuki Takahashi’s blog

シンポジウム 主旨文(転載)

11月29日(土)に同朋学園成徳館12階ホールにてシンポジウムを行なう。その骨子となる主旨文をそのまま転載する。
現代GPシンポジウム
やさしい美術 ―いのちの現場で育まれるアート・デザイン―
【主旨】
病院とアート・デザイン。一見重ならない領域の協働が今注目を集めている。病院は「医療施設」であるが、もはや「医療のみの施設」ではない。病院は地域とのつながりの中にあり、人が出会い集う場所である。病院は人々にとってなお特殊な場所であっても、そこには人のいのちの営みがすべてと言っていいほどつまっているのだ。こうした視点に立つと、「病院は地域に開かれているべきだ」「安らぐ空間であってほしい」という社会的要請はごく自然な声と捉えることができる。

一方、こうした場所でのアート・デザインの活動は歴史が浅く、社会的な位置付けが成されていない。関与していく手法も確立されていないのが実情である。それはアート・デザインが医療の現場で必要とされる科学的根拠(エビデンス)が強く求められ、大きなムーブメントに発展しにくい事情もある。とはいえ、医療に携わる人々から「アーティスト・デザイナーにもっと医療の現場に関わって欲しい」という要望が少なからずあるのも事実だ。

繰り返すが医療の現場とアート・デザインとの接点は少ないというのが一般的である。それは何故か。その問いは「アートとは何か デザインとは何か」という本質的な問いに還ってくる。
本シンポジウムの目的は、医療とアート・デザインとの関わりを様々なまなざしで捉え、アート・デザインという創造をいのちの営みと丁寧に重ね合わせること、そして日本の現代社会という広大なフィールドから、その存在意義を掬い取ってくることである。

第一部では「やさしい美術」プロジェクトの実践報告を糸口に、基調講演にはアートマネージメントの専門家である林容子氏を迎え、社会情勢や制度の異なる海外のアートプロジェクトや医療現場での取組みを参照しながら、日本で始まったばかりの医療現場とアーティスト・デザイナーとの協働の意義を問う。

第二部では、林容子氏に加えて、医療人類学から小林昌廣氏、生命倫理学から田代俊孝氏、医療の現場から足助病院院長の早川富博氏 各専門諸氏を招き、パネルディスカッションを行なう。医療とアート・デザインのコラボレーションを多角的な視点で立体的に捉えることを試みる。
(取組担当者)