Nobuyuki Takahashi’s blog

稲刈り+12時間耐久マニアック

「イナゴハビタンボ」/塩澤宏信氏作と稲

9月20日(土)9:00に春日井駅に集合。プロジェクトメンバー、スタッフ、卒業生を含む総勢7名で妻有(新潟県十日町市)へ。流動的だった、稲刈りの日取りの連絡が来たのは出発ほんの数日前。急ではあったが行ける人で妻有に出かけ、稲刈りをお手伝いすることにしたのだ。就職して仕事をしている卒業生の福井も参加。彼女は前回のトリエンナーレで「みぢかな絵画」と題して病院職員手作りの絵はがきを患者さんに渡す企画を実施した。やさしい美術のワークショップの出発点を築いたのはこの絵はがき制作ワークショップである。
春日井から名神高速、小牧のジャンクションから中央道へ、長野道、上信越道を抜け、休憩をしながらでも6時間たっぷりかかる行程だ。昨日の足助に続きマニアックしりとりで道中盛り上がる。
15:00 妻有入りすぐに松代農舞台に向かう。10月からお借りする空家(樋口家)を見学させてもらうため、鍵を借りた。
16:00 空家(樋口家)に到着。隅々まで見学する。スタッフ赤塚と「茶会」実施のシュミレーションをしたり、展示方法などを検討する。玄関から西日が差し込んでくる。家屋内にとろけるような美しい光が充満する。この空家の持っている魅力の一つを発見できたことがうれしい。
空家見学ののち、鍵を農舞台に返し、温泉「雲海の湯」に行き、疲れをとる。
19:00 三省小学校(廃校を利用した宿泊施設)に到着。早速食事にする。米の香しさを堪能する。食後全員で談笑。米どころにせっかく来たので飲める人のみ日本酒をたしなむ。ちょうど食堂で居合わせた農舞台支配人の関口さんに舞踏家で有名な森繁哉さん、江戸あやつり人形結城座の結城育子さんを紹介される。妻有になぜこれほどまでに若者たちが引き寄せられるのか。それは、若い世代にとって、人と人が関わるという実体験の喪失感とコミュニケーションへの乾きではないか。妻有に来て、地域と関わり、作品制作や制作のサポートを通して、人から必要とされることのよろこび、かけがえのない自分に出会えるのではないか。そんな話を森さんと結城さんと話する。結城さんはあやつり人形の世界に飛び込んできた若手を仕込むために強くしかることがあるそうだ。しかられたことに対してうれしさを伝える若者も少なくないと言う。本気でしかる大人が周りにいないのだろう、現代の風潮を感じるエピソードだ。
翌日21日(日) 私は5:00に起床。雨が断続的に降る。雨が小降りになったのを見計らってカメラを持って撮影に出かける。集落の家々には草花が咲く。雨を受けてしなだれながらも瑞々しい美しさを放っている。その感覚をフィルムに焼き付けたい。
朝食後9:00に三省小学校を出発。雨の中の稲刈りになるので雨合羽を購入する。
10:00 稲刈りをする松代の田んぼに着く。この日、トリエンナーレ参加作家の塩澤宏信さんの作品「イナゴハビタンボ」周辺の稲を刈るお手伝いをすることになっている。塩澤さんは一足先に現地に着いていた。簡単な自己紹介をして準備を始める。そこへ地元の協力者シュウイチさんが軽トラで登場。とっても笑顔がすてき。稲の刈り方、束ね方を丁寧に教えていただいた。学びの場は学校だけではない。学ぶべきことを学ぶべき人から現場で学ぶ。これほど豊かな教育の場は考えられない。
昼までメンバー全員もくもくと作業する。激しく降る雨のため稲がいろんな方向に倒れているので刈り取る作業もいつもより手間取ったようだ。作品「イナゴハビタンボ」の田んぼの隣はそば屋なので、昼食はそこでそばを賞味する。秋の山菜盛りだくさんの天ぷらが美味しかった。
午後は刈り取って束ねた稲を稲架にかけていく。雨を吸っているからか、思いのほか稲は重い。この重さは米の重さ、大地と日の恵みの重さ。
15:00 作業終了。塩澤さん、シュウイチさんに再会を約束して帰路へ。
雨の中での労働、汗を流したこともあり、十日町駅近くの交流館「キナーレ」に寄り、温泉につかる。
各々土産を買ったり、キナーレをめぐる。キナーレの中庭でまどろんでいると、スタッフの赤塚と泉が私を呼ぶ。なんと、二人の横には空家(樋口家)の家主さん樋口さんがいるではないか!樋口さんにお会いしているのは私だけ。それなのに何故??
3人の話を聞いてみると、たまたま通りがかった赤塚と泉を樋口さんが呼び止めたそうだ。赤塚のあまりにも突飛なカバンが目にとまったらしい。「何しにきたの」という樋口さんに訊ねられてプロジェクトの話をしたら、空家プロジェクトの件がつながったわけだ。こんなことあるんだね。世界は広いのか狭いのか。うん、やっぱり狭いかも。
「樋口さん、お世話になります。これからもよろしくお願いします。」とご挨拶して一路名古屋へ。
帰り道、ふたたびマニアックしりとり。前日と合わせてなんと12時間耐久しりとりである。今回の妻有行きのもうひとつの収穫。