Nobuyuki Takahashi’s blog

大島 涙が出るほどに

6:00 となりの女子チームはすでに起きている。へとへとになって隣で寝ている川島を起こさないようにそっと起きる。雨が上がった。曇っているが梅雨空のことだ、どうなるか予測がつかない。
看板を取り付けたカフェと同じく看板を仮置きしたギャラリーに行き、全景の写真を撮影。webで活用する写真なのだが、空は晴れわたっていてほしい。午後に望みをつなぐ。
7:00 洗濯機をまわす。汗と作業のほこりでめちゃくちゃに汚れている。

なんて瑞々しくて美しい!

8:30 外で声がする。入所者の野村さんだ。いっしょに畑でミニトマトを収穫。朝起きて新鮮な野菜をいただく。大地の恵みが全身に染み込んでいく。私の家族にもこの体験をしてほしい。大島の人々はこうして生きる喜びを噛みしめてきたのだ。
9:00 朝食後に外に出ると、野村さんの奥さんも畑仕事。となりの10寮の大野さんも出てきた。野菜を眺めながら、話ははずむ。スイカが随分大きくなっていた。カボチャがなっている。野村さんが「1つ食べるか。」と1つちぎってもらう。はさみをいれた蔕から玉のように樹液が出ている。植物も生きている。
9:30 遅くなってしまった。桟橋に向かうと桜公園のあたりでこえび隊の皆さんと出会う。明るい空気を携えて人々が大島に来る。大島に泊まっていると、ちょっとだけ入所者の皆さんの気持ちが理解できる。人が来るということは外の空気とともにやってくるのだ。小さな島だ。私たちの話し声もはしゃぐ様子も島の端から端まで伝導していく。
野村ハウスに荷物を置き、まず、GALLERY 15に行く。こえび隊の皆さんに一番最初のお客さんになっていただく。「大智×東條展」の鑑賞。
部屋には何もものを置かない。ただ、大智さんと東條さんの畑での掛け合いが建物全体を包む。こえび隊の末藤さんはしばし廊下に座り込みこの声に聞き入り、涙していた。私も初めて大智さんたちの声を聞いたとき、あふれる涙をこらえきれなかったのを憶えている。伝わる人には伝わる。
納骨堂に行く。その後は北部の畑を通り風の舞に行く。その途中のことだ。畑で働く入所者はとてもいきいきとしている。その代表格に入所者の大智さ

畑作業は楽しい

んがいる。大智さんのバイタリティーは触れ合う人に伝染する。私たちもすっかり土と戯れることが好きになった。そんな話をしていたら、桜並木の向こうから上半身はだかの大智さんが自転車でやってくる。すごいタイミング。井木と泉はハーブの苗を持ってきていたので、その場で植えても良いか大智さんに交渉。そのまま畑に入り畑仕事を始める。皆でわいわいと畑の草抜き。大智さんは「楽しい。若返る。」とおっしゃる。畑を通して人と人がつながっていく。
風の舞まで行く。予定通りでない大島時間が心地よい。道草しながら横道にそれながらも私たちは大島の生命感に抱かれていく。
カフェ・シヨルに戻る。ここで作業班を二手に分ける。こえび隊崎山さんにはガイドのシミュレーションを進めてもらう。

杭を打ち込む

GALLERY 15の看板は昨日仮置きしたままになっている。大島の風は強い。吹き飛ばされないように杭を打ち込みそこに結わえ付けて固定する。川島が掛矢を福祉室作業部から借りてくる。さて、ここからが本番だ。60センチの杭を打ち込んでいく。皆慣れていない作業のなか、汗を流しながらよくやってくれている。私はギャラリーにやってきた入所者の脇林さんと一緒に新聞社の取材を受ける。松をテーマにした展覧会のビジョンを二人で語りあう。
ふと気がつけば大島にいられる時間が少なくなっていた。最終の高松便に乗船しなければならない。杭を打ち込んだあとは私以外は文化会館に行き、Morigamiの展示作業を継続する。私は看板を杭に括りつける作業にとりかかる。
16:00 作業終了。後片付けと荷造り。
16:30 まつかぜに乗船。強い日差しと重労働で皆へとへとになっている。作業に追われて十分にインタビューができていない新聞記者さんから質問を受ける。
17:00 高松の桟橋に到着。私たちは間髪入れずにレンタカーに乗り込んで名古屋に向かう。
こえび隊の皆さんが私たちを見送ってくれた。車中では皆さんの活躍の話で持ち切りだった。すでに私たちやさしい美術とこえび隊大島チームは多くの思い出を共有している。芸術祭のスタートラインが見えてきた。