Nobuyuki Takahashi’s blog

解剖台修復1

メンバー森が朝早くからビーチコーミングでたくさんのシーグラスを拾ってくる。野村さんからオクラの花をいただく。ここのところ毎朝咲くオクラの花は何度見ても見飽きない美しさ。
ギャラリー、文化会館、厚生会館をオープン状態にし、朝一便の来場者を迎える。やさしい美術プロジェクトに関わり続ける卒業生の浅井が来てくれる。ちょうど一年前、新潟の「やさしい家」にも来てくれた。どんなに忙しくても、いつもやさしい美術のことを気にかけてくれている。こうした卒業生の支えがあってやさしい美術は元気に活動できるのだ。そっかー、もう一年経つんだね。
10:30 泉と森が買い出しに高松に向かう。森はその足で名古屋に帰る。
私は解剖台の修復に向かう。破片の断面、モルタルの仕上げ面をよく観察すると大体どのあたりのパーツかがイメージできる。
昼食を浅井と一緒に食べながらディスカッション。浅井は現在障害を持つこどもたちを教える仕事をしている。社会の枠組みから取りこぼされがちな「障害」について考えを巡らせてみると、ここ大島が社会から隔絶され、人を隔離してきた人間の心理と重なる部分が見えてくるような気がした。
13:25 浅井を桟橋から見送る。来てくれてありがとう!
解剖台の破片は欠落している部分をほぼ網羅できることがわかってきた。まるでパズル。作業は難航する。問題は解剖台本体に組みつける手順である。これをまちがえると組み合わせられないパーツが出てくる。
14:30 買い出しから帰ってきた泉から電話。台湾からの来場者がいるとのこと、今日はなぜか通訳の人がインフォメーションに待機していないので私が島内をガイドすることになった。つたない英語で大島をまわる。途中で農作業をしている野村さん、盲人会の磯野さんに出会う。野村さんは「遠くから来たのう。」とにこやかにお話しされていた。58年におよぶ大島での暮らし。16歳で大島に来た野村さんの心情をおもう。台湾の皆さんも興味深くお話を聞いていた。
16:15 泉と二人で桟橋から高松便の最終を見送る。
私はギャラリーをクローズした後、向かって左の解剖台(海から引き上げた際にまっぷたつにわれてしまっているので)の破片に石材用ボンドを調合してはり合わせる。固定するためにベルトで締めつける。組み付け作業を一区切りつけ、潮の引いた海岸を歩いてみることにする。北へ北へ歩を進める。ところどころきわどい岩場があるが、先に行きたい気持ちをスポイルされることはない。それほどに手つかずの海岸線は美しい。「馬の背」のもとまで行くと、岩間から野鳥が飛んでいくのが見える。近づいてのぞき見ると浸食した岩場が洞穴になっていて「馬の背」を貫いているではないか。向こう側の光が差し込んでいるのが見える。大人の身体ひとつがなんとか通る洞穴、今回は通るのを見送る。潮がぶつかり合うところがある。私は浅瀬で波立っていると思っていたが、潮の満ち引きで双方から潮の流れがぶつかり合う場所があると教えてくれたのは入所者の浜口さんだ。そこだけが海が隆起しているように感じる。海が生き物のように感じられる。