Nobuyuki Takahashi’s blog

毎日の積み重ね

6:00 起床。毎朝入所者の野村さんが畑仕事で野村ハウスにやってくる。今日は水菜、二十日大根を植えるとのこと。私たちも手伝う。作業が終わったところで野村さんに「松展」へ盆栽の出品を依頼。以前から相談はしていたので、「毎日水をやればいいから、いいよ。」とおっしゃる。野村さんの松は30年から40年育てているものがほとんどだ。そのほかツツジや藤がある。松は大島の南の山や東隣の兜島に船を漕ぎ出して採ってきたものだ。大島の松を入所者が育てる。そしてその松を大島にやってきた来場者が鑑賞する。2代にわたって育てているものもある。つまり亡くなられた入所者から受け継いで育てているものだ。盆栽は入所者同士をつなぐバトンにもなっている。
ギャラリーで掃除をしていると、入所者の脇林さんがやってくる。昨日届いた展示ケースを見に来てくれたのだ。入所者の何人かは墓標の松の出土品を見せたいと強く願っている方々がいる。青松園の歴史はたかだか101年。墓標の松は800年を越えるといわれる。歴史の重み、時間の広がりが小さな大島を掬いとり、包容している。そのことが入所者を元気づけるのだろう。
来場者のなかに50年前に慰問のための野球の試合に大島に来たことがある方がいた。当時小学生で社会のハンセン病に関する理解がない時代。世間での刷り込みもあっただろう、島に着くまでと島内の様相(有毒地帯と無毒地帯が分けられていた状況など)が目に入って来て、大島が怖い場所という記憶だけがのこってしまった。60歳を過ぎた今、訪れようと思い立ち、大島にやってきたのだそうだ。
このようになかなか大島に来られなかった年配の来場者がここのところ増えてきている印象がある。芸術祭での一般公開はボディーブローのように大島に脚が向かなかった人々へも利いているのかもしれない。