Nobuyuki Takahashi’s blog

施設見学ぬくもりの里

ぬくもりの里 壁面に飾られた貼り絵と千羽鶴

7:30 自宅を出発。2月ほど前にご相談いただいた、豊田市社会福祉協議会「ぬくもりの里」に施設見学に行く。本学に相談窓口が存在しないなか、私が直接対応しなければならないため、スケジュール調整が難しく必要以上にお待たせしてしまいご迷惑をおかけしている。
9:00 矢作川をさかのぼり、待ち合わせ時間ぴったりに到着。
「ぬくもりの里」の青木所長が迎えてくれる。
平屋で天井の高い開放感のある空間にまず驚かされる。地域のお年寄りを自宅から送迎し、デイサービスが受けられる施設だ。大きなゾーン分けはあっても壁や敷居がないバリアフリー。目が隅々まで届き、明るい空間となっている。多くのレクリエーションや作業を通して貼り絵や書道、編みぐるみ、折り紙が飾られている。ヘルパーさんらの努力や労力がひしひしと伝わってくる。青木さんによれば、空間のトータルなコーディネートに苦心しているとのこと。サービスを受ける方々だけでなく、地域住民にも気軽に立ち寄っていただくような開かれた場所にしたいと青木さんは願っている。
青木さんのお話をうかがいながら、足助病院を思い浮かべる。「足助病院は地域の人々がもっとも多く集まる場所」とは早川院長の言葉だ。人々が集まれば、出会いがあり、会話が生まれる。足助病院は地域の人々にとって縁側のような機能もはたしているのだ。その「縁側」をふさわしいかたちにして行きたいという要望はごく自然なものだと思う。
青木さんの言葉は地域への愛情に満ちている。私たちの活動にもとても興味と関心を寄せていただいている。青木さんはやさしい美術プロジェクトの数々の掲載記事を出してきた。その共感するところを賞賛いただき、取り組みが方々に浸透している実感がわいてくる。
青木さんが役場で勤めておられたころ、ご担当された6〜7戸ほどしかない集落での出来事をお話しされた。その集落は戸数も極端に減り、高齢化も拍車をかけていた。体力を失って行く集落には失って行く文化も多い。そこは御岳山を眺めることができるすばらしい景観に恵まれており、それにまつわる塚がところどころに遺されている。かつてはそれを集落の住民で巡り、神に捧げるお祭りが存在していた。その捧げものとは「五平餅」である。
ある日のこと、青木さんは長らく執り行われていなかったお祭りを復活するところに立ち会うことになった。五平餅を住民全員で手作りで用意し、お祈りして五平餅を塚に捧げ、練り歩く。最後に残った五平餅を自分たちで食す。
青木さんはそのお祭りのことが忘れられないのだそうだ。極シンプルに、多くの人に知られることもなく、ひっそりと執り行われる自然との交歓。そこに人々がいきいきと生きて行く本質があると青木さんはおっしゃる。
同感だ。私は10年ほど前に小原村(現豊田市)の山間に暮らしていた。私がそこで暮らして学んだことの多くは青木さんのおっしゃることとそのまま重なるものだ。そのことを青木さんに伝えると、それまでの緊張感がほどけるように空気がやわらいだ。
大島で泉、井木といっしょに「お祭り」をつくってきた。「かんきつ祭」「よもぎ祭」…。そこに人間の営みを越えた自然へ畏れと感謝の気持ちをそそぐ。カフェで食する。青木さんのお話をうかがいながら、大島での日々がオーバーラップしていく。
11:30 ぬくもりの里を出発。午後の授業に急ぐ。

大島にひさしぶりに降った雨