Nobuyuki Takahashi’s blog

安長さんの自転車

毎日少しずつ磨いている解剖台

慌ただしかった「大島に暮らす展」と「大島の身体(からだ)展」準備と作品設置。キャプションの微修正などがようやく落ち着き、安心してじっくりと鑑賞できるかたちに仕上がった。今日私は一旦名古屋に帰る。
8:00 準備に泉はすでにカフェに出ている。畑作業に来た野村さんにアクリルフレームに入れた写真をお渡しする。写真は野村さん一番の自慢、サツキの盆栽が満開のを撮影したもの。野村さんはいつものように少し伏し目がちに受け取る。
お客さんがギャラリーに来る前の少しの合間に今後の活動についてのレポートをまとめる。すると外から「おい、先生はおるか」と声がする。となりの10寮に住む入所者の安長さんだ。私が玄関先に出て行くと、安長さんが茶色の自転車を携えて立っている。「置いといてもしかたないからあんたが使うとええ。」といきなりその自転車を差し出す。
遠慮なくいただく。よく見ると、チェーンにオイルを注したばかりだ。新しい自転車ではないけれど、とてもよく整備されている。安長さんが毎日少しずつ整備してくれた自転車。サドルの高さを合わせて乗ってみる。あ、しかもこの自転車、3段のギア付き…。気持ちよく大島の風を切る。安長さん、ありがとう。

大島の身体展の一部

11:00 お客さんに解剖台とギャラリー展示の解説をしている。ふと土手に目をやると入所者の脇林さんがカメラを抱えている。芸術祭の様子を記録してくれているのだ。
安長さんから「先生、コーヒー飲みにいくぞ。」と誘われる。「先にカフェに行って待っててください。すぐ行きますから。」安長さんにもらった自転車に乗ってカフェ・シヨルへ。
カフェの真ん中の席で安長さんは本を読んでいた。私はカフェの片隅に置いてあるギターを持ち出してくる。コーヒーを飲んで、ギターをひく。安長さんはだまって本を読む。なんて心地の良い時間。このカフェをプロデュースした井木と泉のつくりかったことはこの何気ないくつろぎの時間なのだ。入所者自治会長の山本さんも数人の女性を連れてご来店。こちらも話に花が咲いてなかなか楽しそう。あまりにもなごやかなひととき、愛機のシャッターをきる。
16:15 まつかぜに乗船。泉と職員の大澤さんに見送られて大島を後にする。
高松に着くと人、人、人。芸術祭のスタッフによれば、どの島も全部が原宿状態だそうだ。瀬戸内芸術祭ラッシュである。