Nobuyuki Takahashi’s blog

やさしい家

やさしい家の1コマ

震災の当地から離れている私たちは何ができるのか。
絵はがきを描き、メッセージを贈る。それも一つ。
現在は救出、そして被災した方々の安心と生活がまずもって取り組まなければならないことだろう。
ではもう少し長いスパンでその後の復興を考えた時、私ができることがあるだろうか。
「やさしい家」を仮設住宅近くに設置してはどうか。
この「やさしい家」とは2009年に新潟県立十日町病院のすぐ傍らに借りた空き家を活用したプログラムのことだ。より病院の日常にかかわっていくやさしい美術の拠点を設けたわけだが、実は複合的な機能を意図していた。地域の子どもたちが縁側に集うように遊びにきたり、参加型プログラムを開催して一般来場者と地域の人々が交流する場を設けたり、時には退院した病院利用者や通院者が立ち寄る病院と地域の間をつなぐ試みでもあったのだ。「やさしい家」をめぐって多くのエピソードがのこる。近所の子どもたちは毎日のように「やさしい家」を訪れ、森をつくるおりがみ「Morigami(もりがみ)」を折っていった。それらはすぐ傍らにある病院へ届け、院内の緑化運動に発展した。私たちが毎日展示替えを行っていた河合正嗣さんの「110人の微笑む肖像画」を観るのを日課にしていた入院していた方が退院してすぐに「やさしい家」に立ち寄った。そこで正嗣さんの作品との涙の再会をはたす。
どのような形でもよいが、昨今病院のアメニティーや環境整備に取り組む様々なプロジェクトで言われているように、「縁側」のような形式張らず、やわらかに人と人、人と場所をつないでいく場が、被災地で求められてくるのではないか。