Nobuyuki Takahashi’s blog

想像力

昨日、仕事を終わらせ、覚王山でNHKのディレクター西川啓さん、ギャルリ百草のオーナーで陶芸家の安藤雅信さん、パティシエの石川記子さんと食事した。西川さんの呼びかけで東日本大震災に際して、自分たちに何ができるのか、ざっくばらんに語り合おうということになったのだ。
それぞれ皆さんは独自のスタンスで支援のかたちを探り、そして行動している。仙台にいる石川さんのご友人が手作りのマドレーヌ10000個を被災者に配ったそうだ。胸を打たれる―。私が「絵はがきワークショップ」の概要を説明したら、ギャルリ百草で簡易的なブースキットを組んでいただけることになった。ありがたい。
西川さんと話したことで、とても重要なテーマだと思われる「想像力」について書き留めておきたい。私たちは足助病院で入院しておられる病院利用者の皆さんにインタビューを行っている。いつも実感することがある。人と人が出会うということはその人の生きてきた時間や空間、記憶…その人を形成する諸々のバックグラウンドと出会うことに他ならない。病院では多かれ少なかれ自分の病院での経験と照らし合わせ、想像力を働かせながら、自分の姿をそこにいる患者さんに重ねて行くことができる。そこで起こっていることが自分の問題へとリフレクトされるのだ。しかしハンセン病の療養所である大島ではそうはいかない。出会った元患者さんらが歩んでこられた人生の道のりは私たちの想像をはるかに越えてしまう。それでも今を懸命に生きておられる入所者の皆さんと心を通わせ、笑って、泣いて、歌って、語っているうちに、少しずつ入所者の皆さんの心情が私たちの心に染み込んでくる。それは、きっと、痛みとか苦しみとか、普段目を背けるような感覚を介して、分け隔てられた自己と他者を共振させているのだろう。 想像力は拡張する。想像力は分断された関係性をつなぐ。
「絵はがきワークショップ」は想像力の挑戦だ。今さら絵はがきを描くなんて気恥ずかしいとか、かっこわるいとか、そんなプライドの箍があるとしたら、 思いきって取り外してみてほしい。被災者の皆さんがどのような気持ちで今を過ごしているのか、想像しよう。正解も間違いもない。想像したことから、言葉を産み出そう。イメージを描いてみよう。

幼稚園や保育園で子どもたちのワークショップを行っている造形短大の卒業生安原くんが100枚を越える絵はがきを私の元に持ってきてくれた。絵はがきすべてに目を通す。子どもたちの想像力は身を切るほどに透き通っている。涙が出そうになった。