Nobuyuki Takahashi’s blog

解剖台の断面

昨年7月に大島北西の海岸にて発見された解剖台。引き上げと展示を決め、大島青松園の作業部の男たちが不可能と言われた引き上げ作業に取り組んだ。
解剖台は大島で使われていたものだ。30年近く前に不要となり、火葬場近くの岸壁から打ち捨てられると同時に、人々の記憶からも姿を消した。
7月頭のこと、大島の入所者であり写真家の脇林清さんが引潮時に姿を現したコンクリートの塊を写真に撮ったのが引き金となった。入所者にしてみれば、誰から見ても一目瞭然、解剖台だった。
引き上げられる際に真っ二つに割れてしまった解剖台。無理もない、解剖台には芯材が入っておらず、そのまま移動することは困難だ。このコンクリートの塊は大島の外で作られたのではなく、おそらくここ大島で作られそのまま据え置かれたものだ。

二つに割れてしまったからこそ引き上げることができた解剖台。ひょうたん型の周縁部も大きく破損してしまったが、断片は残さず回収して保管した。
拾い集めた断片をひとつひとつパズルのようにつなぎあわせる。解剖台の修復をしながら、その断面を心に刻む。どのような色をしていたのか、どのような質感だったのか…。

修復しながら私が撮った写真をここに掲載しておく。大島を訪れた際にこの解剖台を通っていった人々のことを思い起こしていただきたい。きっと解剖台は私たちの心の内を鏡のように映してくれることと思う。

解剖台再発見時 写真:脇林清氏

解剖台の設置の様子

修復が終わった現在の解剖台