Nobuyuki Takahashi’s blog

世界を切り取る

2月1日(日)午後に市民ギャラリー矢田で開かれている「Finder」展を見に行く。ブラジル移民100周年記念行事として、名古屋市文化振興事業団が助成している企画展だ。会場に着くと、企画者の長谷川哲さんにちょうどお会いすることができた。展覧会は3階の5つの展示室、4階の展示室全館を使った大規模なもので、写真というメディアを駆使した表現の作品が並ぶ。
天井高6mの広大な4階の第一展示室で長谷川さんが展示している。「これまでのシリーズが風景論だったとしたら、今回の展示は人間論である」というコメントが会場に掲示されている。写真は世界を切り取ったものである。時間と空間を描写し、その一瞬を克明に記録する。長谷川さんは写真の現実感をはぎ取るために、まず写真をコピー機にかけるそうだ。モノクロームの世界のある一部分ーここでは風景の一部である「人」ーの他はノイズのようなストロークのはげしいスクラッチが画面を覆っている。空間全体で見た時に、それらの人の所在がきわだって浮かび上がってくる。まるで霧の中から人影だけがこちらに迫ってくるかのようである。広大な展示室全体にストロークがとびかっているように感じられ、壁面のみに写真が展示されているのだが、空間の充満感がすごい。
私は最近、写真をよく撮っているので、今回の展覧会はとても興味深かった。世界をいかに切り取るか、という課題もあるが、一旦切り取った世界を絵画的なプロセスに乗せて再構築したり、冷徹に切り取られた世界に情念の息吹をふきこむなどのプロセスも必見である。
私はここ数年はレディーメード(既製品を用いた制作方法)で制作してきたが、写真には世界をそのまま切り取るという性質があるので、自然と惹かれていったのではないかと自己分析している。つまり写真とは究極のレディーメードではないか…。
世界を切り取り、それをどのようなかたちで現出するのか、「Finder」展を見て、自分の制作に投げかける。