GALLERY 15 past exhibitions

展覧会名 大智× 東條展 -大島の声-
会期 7月19日(月)~8月10日(火)
コンセプト 早朝、大島北部の畑に行くと谷には入所者同士が掛け合う声が響きわたるのを聞くことができる。その声は今を生きる入所者の叫びである。その声を精密な録音機器で記録し、ギャラリー空間全体に音場を再現した。ハンセン病のため50年、60年を越える長い年月を生き抜いてきた入所者の力強い声を体感する。
展示内容 PCM録音した音声を4チャンネルのアンプで再生し、あたかもギャラリーの東西から声を掛け合っているかのような音場空間を創出した。
その他に、盲人の入所者が盲導柵を杖でたたいて歩く音、キリスト教霊交会の鐘の音を再生した。
ギャラリー空間には一切展示物を置かず、建物そのものを体感する空間とした。昭和50年代後半に建てられた一般独身寮15寮=GALLERY15は比較的新しいもので歴史を如実に伝えるものではないが、入所者の生活の一端を直に感じ取ることのできる貴重な体験空間となっている。
展覧会名 鏡 mirror 展
会期 8月12日(木)~8月31日(火)
コンセプト

長い年月を入所者の傍らで過ごしてきた雑多なものを集める。それらはすでに役割を終え、あるものは海岸に打ち捨てられ、またあるものは物置の陰にあった。それらをひたすら磨く。埃を拭い、錆をおとし、積み重なる「時」を剥ぎ取って行くとその先に出会うものは何か。鏡面を携えたものたちに自らの姿を映す。

展示内容 大島はハンセン病療養所として101年の歴史を歩み、長年閉ざされてきた。現在大島に遺されているものは少ないが、入所者の過ごしてきた時間や暮らしを今に伝える遺物は辛うじて収集することができる。入所者や青松園職員からあずかったり、島内で発見した遺物から、食缶(入所者の食事を運ぶ容器)、柄を装着したスプーン(ハンセン病の後遺症のため手が不自由な入所者が碁石を打つために使用)、井戸のポンプ(水道が整備される前に使用したポンプ)、点字タイプライター(盲人の入所者が使用)などを展示することに決定。それらの遺物を部分的に研磨して「鏡」を制作し、ギャラリー空間に配置した。照明にピンスポットライトを効果的に活用し、鏡面に自らの姿を映し向き合う空間を創出した。
展覧会名 古いもの 捨てられないもの展
会期 9月2日(木)~9月21日(火)
コンセプト ここ大島で「古いもの」はすなわち「捨て去ることができなかった」入所者の心情を現している。
大島は日本唯一離島のハンセン病療養所。引き取り手がなく保管場所も限られるなかで、かろうじて「遺されたもの」は濃密な記憶と存在理由を宿している。
展示内容 入所者との交流が深まるにつれ、大島での暮らしのエピソードをたくさん集めることができたが、より鮮明な記憶に出会うためには、記憶の深部を呼び覚ます実物が目の前にあることが前提となった。
繰り返しになるが、大島には過去を如実に示す遺構や遺物は閉ざされた離島であるために多くが遺失してしまっている。資料的な価値の篩に適うものは、少ないといわざるを得ない。しかし、入所者の生きてきた時間、暮らしの痕跡、苦しく厳しい入所生活を生き抜く術を宿した事物は入所者の手元にいまだ遺っている。やもすればとりこぼしてしまうそれらの古いもの、あるいは捨てられずに持っているものを預かり、ギャラリー空間に再構成した。それぞれの事物に張り付いた記憶をたどるために、ギャラリー入り口に解説を載せた展示マップを設置した。
亡くなられた入所者が一生をかけてとり続けた写真を預かり、編集して展示を試み、ゴミ捨て場で発見された台本からかつて存在した放送劇同好会の記録テープが再発見され、それらを再放送したり、入所者自身で製作した「大島箪笥」などを展示し、大島で培われた文化にふれる内容となった。
展覧会名 松展
会期 9月23 日(木)~10月12日(火)
コンセプト

青松白砂の島、大島。松はいつも入所者の傍らにあった。源平の勇者が葬られたとされる墓標の松は東西に吹きすさぶ季節風から人々を守り、101年にわたる青松園の歩みを包容し、大島の暮らしを見守り続けてきた。大島の原風景ともいえる松をめぐり、さらに大島に迫ってみたい。

展示内容 今回の展示は松をめぐり、大島青松園の歴史と入所者が生きてきた時間、そして800年を越える墓標の松が携えた物語をひとつなぎに見つめるものである。なかでも墓標の松の根元から出土した人骨と刀剣は初めて一般公開し、注目を集めた。盆栽の松は大島の山から採取したもので、入所者同士が代々受け継ぐバトンであり、入所者が生きてきた時間を表している。入所者が撮影した写真からは大島という閉じられた場所から世界を見つめ、自己と向き合う入所者の姿がリアルに浮かび上がってくる。その他やさしい美術プロジェクトのメンバーが制作したドローイングを天井全面に展示するなど、大島の松を出発点に表現の可能性を拓く展示となった。
展覧会名 大島に暮らす展/大島の身体(からだ)展
会期 10月14日(木)~10月31日(日)
コンセプト 「大島に暮らす」
やさしい美術プロジェクトが大島で過ごす時間が次第に長くなる中で見えてきたこと。それは大島の日々の暮らしだった。入所者を講師に招いたワークショップ「名人講座」の成果や大島でかつて作られていたお菓子「ろっぽうやき」の再現の記録などを展示し、大島の日常を展観する。
「大島の身体(からだ)」
大島で暮らす入所者はハンセン病の後遺症のため末梢神経の麻痺など様々な障害をのりこえ、生き抜いてきた。大島での暮らしに欠かせなかった自助具、補装具、義肢にふれ、体験し、ハンセン病回復者の身体を体感する。
展示内容 やさしい美術プロジェクトは2007年より大島に定期的に訪れ、入所者との交流を深めながらアートの取り組みを進めてきた。日帰りの滞在が1泊、2泊と増えるごとに、入所者との交流も深まり、大島の日々の暮らしが身近に感じられるようになった。入所者の記憶をつなぎあわせ再現に成功したお菓子「ろっぽうやき」のドキュメンテーションをはじめ、「名人講座」と銘打った入所者が講師を担当するワークショップ、大島で過ごしてきた日々を記録した写真などを展示した。
また、大島青松園義肢装具士の西尾光雄氏の協力により、大島でつくられてきた自助具、補装具、義肢を展示。古いものでは入所者自身がアルミ板を叩き出してつくった義足から新素材で軽量化した最新のものまで幅広く展示した。また、来館者は展示してある自助具類は実際に手に触れ、入所者の身体を追体験することができる。これら自助具類は入所者が重い後遺症をのこしながらも、生き抜いてきた知恵であり、文化であり、そして生きる力を表すものである。機能のみが追求された自助具は独特の美しさをたたえている。