3月17日−20日
ひかりはがき手渡し 宮古・大槌・気仙沼

2012年の活動報告

東日本大震災に心揺すぶられ「ひかりはがき」の取り組みを始めたのは昨年の3月18日であり、まさに1年が過ぎようとしている。被災した地域で暮らす人々はそれぞれのペースで復旧、復興に向けて歩を進めているなかで、「ひかりはがき」の手渡しを行った。一律でポストに投函したり、配布する方法ではなく、まずその方が語ることや語りたいことに耳を傾け、気持にゆとりがあるようであれば、一枚一枚「ひかりはがき」を選んでいただいている。
今回は手渡しのために当地を歩いてきたメンバーによる所感をここに紹介する。

行程
名古屋→七ヶ浜→宮古→大槌→気仙沼→仙台→名古屋

「ひかりはがき」手渡し報告
七ヶ浜にて
宮城県七ヶ浜町は東日本大震災後の4月にボランティアバス第4陣に、やさしい美術プロジェクトディレクター髙橋が参加した時から交流と連携が続いている。災害支援NPOレスキューストックヤードが企画した仮設住宅の表札を制作するプロジェクトや仮設店舗「七の市商店街」の看板制作を手がけるなどのお手伝いをしてきた。今回訪れた七ヶ浜では仮設店舗店主さんに話を聞く事ができた。
壁から張り出すタイプの看板はお年寄りには文字が小さく見づらいとのご意見をいただいた。また、壁に貼るタイプのメイン看板は店主さんのご家族で話題になるとのこと、元気の良いデザインを選んだ。
各店舗のほかに敷地角に「七の市商店街」の大看板を設置した。住民の皆さんに大変好評とのこと。1月に当地を訪れた時よりも、町全体が落ち着きを取り戻しつつあり、それぞれ忙しくされている様子。仕事の邪魔になってはと、お話を聞く以外は「ひかりはがき」をあらためて見ていただくことはしなかった。

宮古にて
岩手県へ移動、盛岡からレンタカーを借り2時間半かけて岩手県宮古市へ向かった。1月に訪れた際は2時間に一本の電車が通るのみの交通事情から、街全体の様子を知ることができなかった。今回は車でまわり、街全体におよぶ被害の凄まじさが実感できた。まず向かったのは宮古市の浄土浜。急勾配を抜けると仮設住宅があった。周囲にお店はなく、車がないと相当不便な場所である。そこから少し進むと「浄土浜ビジターセンター」という建物があり、浄土浜に関する展示とここで復興支援したアーティストの作品があった。ビジターセンターの職員さんに「ひかりはがき」を見ていただいきながらお話をうかがった。
その後は1月に訪れた仮設店舗の食堂へ向かう。着いてみるとその食堂は水産物の倉庫になっており、近くで仕事されている方の話しでは宮古全体が落ち着きを取り戻し、食堂で働いていた方も心機一転新しい場所に移転したのではないかとおっしゃっていた。震災の爪痕はけっして癒えていないが、街の人々はそれぞれ前に一歩ずつ歩みはじめていた。

大槌にて
宮古を後にし、大鎚町へ向かう。道中海岸線を走り道路の復旧の様子や土台だけの家など、宮城でも見た光景で改めて今回の震災が途方もない広範囲わたっていることを実感した。トンネルを抜け大鎚町へ入ると、今まで見た光景とは異なる景色が広がっていた。そこでまともに立っていられないような感覚、震災直後と何ら変わらない状況が目の前にあった。車が時折通るが、人影はまばらだ。
仮設住宅を見つけ、その道沿いにあるプレハブの「ふれあい会場」に立ち寄り「ひかりはがき」について説明した。そこで働く人によれば、そこにコミュニティの結束を促す場所を創るとのこと。被災した地域の寒さは今日の気候とさほど変わらないのだろうと想像する。暖房など体を暖める術の無い中、家を流され、耐えぬいたのだと思うと胸が詰まる思いだ。

気仙沼にて
冷たい風をひしひしと感じながら気仙沼の町を歩く。漁港に着くと、地震の影響で歩道と道路に段差があり歩行者にはかなり歩きにくい道となっていた。
港は使われているようだが、震災の爪痕はいたるところに残ったままだ。港にある仮設商店街を見つけ、中華料理屋さんでご飯を食べた。お店には他にお客さんがいなかったこともあり、その店のおかみさんに「ひかりはがき」を見ていただいた。一枚一枚丁寧に見てくださり、涙を浮かべている姿が印象に残った。「嬉しいね、有難いね」とおっしゃる。「ちょうどいい額があって」と「ひかりはがき」2枚を丁寧に額に入れて飾ってくださった。
次に水産物を売っているお店に入り、30代の女性に「ひかりはがき」を見ていただいた。時間をかけて3枚を選んでいただき手渡した。「ありがとうございます。」「感動しますね。」とおっしゃる。その女性も目に涙を浮かべていた。これまで過ごしてきた過酷な時間に思いを馳せる。

それぞれの街で進み具合の差はあるものの復興へと一歩を踏み出し、抱えている仕事で忙しい様子だった。「ひかりはがき」の手渡しはさらに渡す際のタイミングや渡し方に配慮が必要だと感じた。初めて「ひかりはがき」を見ていただいた方には時間をたっぷりと費やして見ていただいたことに喜びを感じた。
担当:林治徳