Nobuyuki Takahashi’s blog

2011年 2月 4日のアーカイブ

なぜ、大島 なのか。

2011年 2月 4日

先月の1月28日から29日までレンタカーを走らせて高松まで行ってきた。私とカフェ運営メンバーの井木、泉の3人で大島に保管してある機材、展示ケース、工具類などを名古屋に持って帰ってくるためだ。それらはすべて昨年開催された瀬戸内国際芸術祭の展示のために活用したもの。運送業者に大島まで引き取りに来てもらう手だてがなく、ローコストで運べる方法を模索した結果、自分たちでレンタカーを借りて運ぶのが最良と判断した。

13:55の官用船に乗船。大島に着いてすぐに運び出す荷物を選別し、梱包する作業に入る。明日までかかるかと思われた荷造りが日が暮れるまでに完了。ついでに倉庫代わりにしていたカフェ・シヨルの風呂場とGALLERY15のストックヤードの雑多な荷物を整頓してしまう。明日は船に乗せて高松まで運び、あとはレンタカーに荷物を放り込んで名古屋までひとっ走りするのみだ。

夜、泉が和風パスタをつくってくれた。サラダ菜と水菜は野村さんの畑からいただいたものだ。今日の作業が思いのほか捗り、気持ちも軽い。野村ハウスにストックしてあるお酒で杯を交わす。

井木と泉はNHKの取材を受けて、2月1日に全国に放送された。瀬戸内国際芸術祭が終わったあとも活動を継続する大島にて、カフェ・シヨルで活躍する二人が特集されたのだ。
二人の話によると、取材する記者さんからかなり深くつっこんだ質問があったらしい。それは、
「どうして、そこまでするんですか。」
「どうして、大島なのですか。」
というものだ。芸術祭後二人はカフェの仕込みのために月の半分を大島で過ごしている。なぜそこまでするのか。視聴者の身になってみれば、自然にわく疑問だ。泉はこれまでの経緯と今の自分の心境はなんとなく答えられるけれど、何が自分を奮い立たせ、何を理由にそこまで打ち込むのか、うまく答えられなかった、と言った。無理もない。彼女たちは自分の居場所の一つをそこに見つけて、始めたばかりなのだから。分岐しては合流を繰り返しおよそどの方向へも流れ得る可能性のなかで彼女たちはたまたま大島と出会った。それは彼女らをとりまく時流や家庭環境、生活観などのありとあらゆる状況が許したとも言える。意志や気持ちの強さだけでは説明がつかないのだ。結果としてこの道でしかあり得なかったと感じたとしてもそれは自分の意志と周囲の寛容が絡み合った道なのである。一歩を踏み出す、その先に一本の道があらかじめ用意されているわけではないのだ。
私は「わからないことは、わからない、ということで今はいいと思うよ。」と答えた。問いをなげかけた記者さんは取材を重ね彼女らに近づけば近づくほど、状況とタイミングの網の目の渦中の一点「今」「ここ」を感じたことだろう。しかしメディアの側に立つ伝達者は目前で起きていることの道程をはっきりとわかりやすく示さなければならない。視聴者の無垢なまなざしの前で何をどう伝えたら良いか、さぞ悩んだことだろう。

この質問を私自身にも問うてみたいと思う。
「なぜ、大島なのか。」