Nobuyuki Takahashi’s blog

2010年 11月のアーカイブ

好きになっちゃったの。

2010年 11月 13日

調査書推薦入試の日。
4年前の朝のことだ。娘が生を受けた。分娩室にあふれる陽の光が差してくる中、我妻はへその緒がついたままの我が子をおなかの上で抱きしめていた。
彼女の名前は美朝(みさ)と名付けられた。長男慧地も出産に立ちあったのが印象に残っている。
繰り返しだが、もう、4年も経つのだ。
夜、皆で誕生日パーティーをする。美朝は私の膝の上でべったりとすいついて離れない。上目遣いで「わたし、ハニーのこと好きになっちゃったの。」と言う。
これにはめろめろになってしまう。
ちなみに「ハニー」とはわたしの家族内での愛称だ。
私の顔を見ては全速力で私の胸に飛び込んで来る美朝。
あばらが折れるかと思ったよ―。
生まれてきてくれてありがとう。

大島のその後

2010年 11月 11日

野村さんが植えたブロッコリーは随分と大きく育ったことだろう。

大学に着き仕事をしていてふと携帯電話を見るとメールが一件。
大島青松園の職員大澤さんからのものだった。
そのメールには私たちが寝泊まりしていた11寮=通称野村ハウスの隣人で10寮に住む入所者安長さんのことが記されていた。
芸術祭終了後、一週間滞在を延ばし、カフェのスタッフ泉と井木は土曜日日曜日にろっぽうやきを販売。芸術祭の来場者が多いとなかなか入所者の皆さんにろっぽうやきが手に渡らないことがあり、入所者と職員さんのためにひたすら二人でろっぽうやきを焼き、230個を売り切ったそうだ。その間安長さんはよくカフェ・シヨルにコーヒーを飲みにきたそうだ。
昨日、泉と井木が大島を離れ名古屋に帰った。
大澤さんによれば、その明くる朝、安長さんはカフェの前で立ちすくんでいたそうだ。10寮の畑でだまって佇む安長さんの背中を見て、声をかけたそうだ。
「あいつらいんだんか。(帰ったんか。)もう来な(くるな)いうといてくれ。」とおっしゃったので、大澤さんはこう返したそうだ。
「そんなこと言ってほんまは寂しいんちゃうの。」
「あはは、やかましっ!」

安長さんとお酒を飲んでいた時にこんなことをおっしゃったのを憶えている。
「この10寮で毎日いて寂しいと思ったことないわ。」
でも、そんなことはないのだろう。寂しさ、悲しさ、辛さは口にせず、背中で語る。安長さんは昔気質の男なのである。
入所者の大智さんは畑でひたすら叫ぶ。「おるんかー、おったらええぞぉー。」「つらい、つらいぞぉ。」その声の調子に暗さはみじんも感じない。しかしその声の背景には重く垂れ込めた記憶が横たわっている。だからこそ、大智さんの声ははじける花火のように輝いて感じるのかもしれない。
今日も安長さんは植え込みの手入れをしていたのだろうか。畑のある谷には大智さんの声が響いていたのだろうか。
思いを馳せる。

定例ミーティング

2010年 11月 9日

17:30 やさしい美術の定例ミーティングに出る。会議や小牧の活動などでなかなか出席できないでいた。その間リーダー古川がしっかりと舵をとってくれていた。彼は成長した。作品に関しても実力をあげている。
さて、11月には古川の透過絵画シリーズの搬入、えんがわ画廊の企画展の搬入が迫っている。えんがわ画廊は各病室の廊下表示灯下に小さな縁を設けたミニギャラリーだ。現在は大島参加のアーティストとして活躍する泉麻衣子が学生時代に制作した作品である。
数年を経過した縁部分がゆがみや破損があるために17箇所すべてをとりはずしプロジェクトルームに保管している。実物があるのでえんがわ画廊に展示する学生たちは試作をあてがいシミュレーションをする。
アクリル額もすでに購入した。メンバーらは緊張感と臨場感をたのしんでいるようだ。
よーし、前に進もう!
ミーティングの後は着替えてディスプレイプロジェクトの制作へ。発泡スチロールの粉にまみれて雪男の様相。のこっている学生はアートプロデュースコース3年次の安田のみ。こういう時こそ人がいるのだけれど…。
21:00 作業終了。

講演会のお知らせ

2010年 11月 8日

瀬戸内国際芸術祭での活動は多くの人々の関心を集めている。講演の依頼がいくつかある。ありがたい。うれしい。入所者安長さんがおっしゃった「あんたは大島にいるのもいいけど、もっと外に出て人に話さなければいかんぞ。」との声が響く。
少しでも入所者の皆さんの存在を伝えたい。その肌合いを知ってほしい。その機会がいただけるなんて、私はとても幸運だ。

さて講演会のお知らせである。ご都合のつく方はぜひ!

やさしい美術プロジェクトディレクターの高橋伸行が講演します。
ぜひご参加ください。

今年7月19日から10月31日まで開催された瀬戸内国際芸術祭2010に高橋伸行さんのやさしい美術プロジェクトが参加。
会場となった国立療養所大島青松園は香川県高松市庵治町に位置するハンセン病療養所。
アートを通して人々との熱い思いを語る。(講座チラシ文より引用)

講題:瀬戸内国際芸術祭「ハンセン病の島から」やさしい美術プロジェクト
講師:高橋伸行
日時:2010年11月21日(日)13:00~16:00
場所:愛知芸術文化センター12階 アートスペースE・F
定員:60名 要予約
主催:NPO法人愛知アートコレクティブ
会員無料/非会員500円
申し込み
art_collective8@yahoo.co.jp または fax 052-882-3173

GALLERY GOHON オープン

2010年 11月 6日

終日書類作成に追われる。大学では同僚の日比野ルミ准教授のプロデュースした「ドローイングコミュニケーション」展のギャラリートークが展開されているはずだ。出席できなくてごめんなさい。
夕方時間をつくり、自家用車を走らせ本郷にあるGALLERY GOHONへ。
我がアートプロデュースコース研究室職員でアーティストの鈴木里菜が計12名のアーティストと共に自主運営ギャラリーを立ち上げた。その旗揚げになる運営メンバーでもある12名のアーティストの展示が行われている。
18:30 30分また遅刻。オープニングの挨拶が終わったタイミングでギャラリーに入りお祝いのワインを鈴木に渡す。
すばらしい空間だ。企画展も行っていくが主に運営メンバーである12名のアーティストの作品をプレゼンテーションしていく場というコンセプトだと聞いているが、その気迫を強く感じる。空間の設えはオルタナティブというカラーではなくコマーシャルギャラリーをモデルにしているように思う。まさに「プレゼンテーションルーム」。中途半端でないところがとってもいい。
私たちが運営していた+Galleryは洗練された方向性よりも荒々しく実験的なスペースを目指していた。お客さんはそこに魅力を感じてくれていたと思う。
いろいろな方向性があっていい。学生にもぜひ見に来てもらい、おおいに刺激を受けてほしいと思う。
一方展示について。
ペインティングの作家がほとんどで、展示は中小品をオーソドックスに並べている。すでにコマーシャルギャラリーでデビューしている作家もいてどれも質感は高い。そしてすべての作品が額装されずキャンバスのまま提示されていることに気付く。それぞれの作品は具体的イメージが描かれているものから絵の具の物質感が前面に表現されているものまで様々だが、仮縁や額にはいった作品はない。空間のクオリティーの高さも手伝って不思議と作品同士が心地よい距離感と統一感を保っている。参加作家の諏訪くんの言うところでは特に統率をはかった訳ではないという。私の深読みかもしれないが、12名のアーティストが集った時点で、空間や絵画に対してGALLERY GOHONとしてのある種の了解-領海が無意識に共有できていたのではと。
カラーがあることはいいことだ。今後に期待したい。

満員御礼状態のオープニング

隅々まで神経が行き届いた空間

岡崎東高等学校でのレクチャー

2010年 11月 4日

昨日は終日実技推薦入試。
今日は高校から依頼があった出前授業を担当することになり、岡崎東高等学校で模擬授業を行うことになった。
13:15 岡崎東高等学校到着。校門から校舎まで100メートルほど。その両側に見事に黄色に色づいた銀杏並木。なんとも清々しい気持ちになる。校長先生に学校の印象をたずねられ真っ先に銀杏並木の話題に。校長先生は誇らしげに自然の豊かさをお話しされた。
13:30 12名の一年生の生徒さんを前にプロジェクターで画像を見せながら1時間ほどレクチャーを行う。やさしい美術プロジェクトは社会実践であると同時に教育プログラムとして学生有志に支えられてきた活動だ。コースの枠、専門領域を越えて協働して運営している様子を伝えることで、生徒さんのモチベーションがアートやデザインへの興味からさらに一歩踏み出して目標を持つことにつながればと思う。
レクチャーの後何人かの高校教諭の方から「今日、テレビに出てましたね。」「ラジオを聞きました。」と声をかけられる。そういえば、今日4日のNHKにて「おはよう日本」で大島の企画展「大島の身体(からだ)」展について全国に放送されたばかりだ。すぐに反応がありうれしい。
16:45 大学に戻り、30分ほど遅れて教授会に出席。

文化実行委員会に行けないよー

2010年 11月 2日

授業後すぐに足助病院に向かい、16:30から開催される文化実行委員会に参加する予定。スタッフ川島は諸々のメンテナンス作業などのために先に足助病院に向かっている。
ところが、3年次が取り組む産学共同プロジェクト「MOZOディスプレイプロジェクト」の件でどうしても出発できない。発泡スチロールの接着作業の段取りをしていくが、人も足りない。
2メートル×1メートル×1メートルほどの発泡スチロールからサンタクロースのブーツを作る。学生時代にアルバイトで様々な造形物を作った。ある遊園地の珊瑚礁や海賊船の外装など、ありとあらゆるものをウレタン樹脂を削りポリエステル樹脂を盛りつけてつくった。その経験があるので自分で言うのもおこがましいが作業はすごく早い。
「このままでは絶対に間に合わない。」
本来は学生が時間がかかってでも苦労し失敗してでも自分たちで制作して体得するべきなのだが、今回は悩んだ末、私も作業に加わることにした。そこに甘えず、私の横で吸収してくれることを期待して。企業との約束のもとに結果を出さなければならない「産学共同プロジェクト」は学生と指導するサイドとの距離感が実は一番難しいところなのだ。11月28日の搬入まで学生との協働が続く。
しかし―。
足助病院の正規の委員会「文化実行委員会」への出席の機会が与えられているのにも関わらず、ディレクターの私が出席できていない。教育機関と外部施設との連動は本当に難しい。

小牧 試作検討モビールと室内装飾

2010年 11月 1日

芸術祭閉幕から一夜明けた朝

せいしょうのレーダー画像

8:30 大島発高松行きの官用船せいしょうに乗船。芸術祭閉幕から一夜明け、平常通りの大島は静まり返っている。泉、井木、張はあと一週大島にのこり、ろっぽうやきを入所者むけにふるまうことにした。
私は大島から直接大学へ向かう。午後授業を担当するため、急いで名古屋にもどらなければならないが、一本電車を逃してしまう。15分ほど遅刻してしまう計算だ。
13:15 大学着。さっそく1、2年次の修了制作展のミーティングに。
この2、3週を使ってみっちりとディスカッションを繰り返してきた。学生らはエレベーターと階段を企画の場所に選び、特にエレベーターの持っている潜在的な可能性として乗り降り、ON-OFF、閉鎖空間-開かれた空間についての考察に議論は広がっている。それらの物理的側面と心理的側面がバーチャルの世界と現実世界と対比して見えてきて、なかなか面白い展開になってきた。彼ら彼女らのなかでは、エレベーターを考察することが思わぬ気づきにつながっているようだ。現在の自分たちをとりまくマトリックスについて単に享受するものに終わらない何かに化けようとしている、といったら良いか。

小牧市民病院にでかける

16:30 授業後、スタッフ川島の自家用車に乗って小牧市民病院へ。道中、制作の依頼を持ちかけたやさしい美術メンバーで卒業生の天野を拾う。
17:30 小牧市民病院に着き南6病棟に向かう。ここは脳外科の患者さんが入院している病棟だ。デイルームを装飾するプランを提案中だが、他の病棟とは異なった配慮が必要で、作品を展示するには難易度の高い場所だ。脳外科の患者さんはデイルームで食事をとる。看護師さんが目を配り、家庭的な雰囲気を創り出し、丸テーブルについて食卓を囲む。担当の看護師さんから私たちに言い渡されていることは、「食事をしている患者さんが食事に集中できるようにしてほしい。」ということ。この時点でモビールという選択肢はなくなった。ぼんやりと空間に漂うモビール作品を眺めていたのでは、患者さんは食事に集中できないのである。今回は何気ない空間装飾によって空間のやわらかさを演出することにしている。作品が主張せず、いつもの空間をほんのりと変える。現場で制作の打ち合わせを進めていく。食事の様子をみることができたのでプランを考える上で参考になった。
一昨年から継続している「森をつくる折り紙Morigami(もりがみ)」のメンテナンスをする。紅葉バージョンの折り紙を補充し、緑バージョンを少しばかり間引く。こうした繰り返しでMorigamiの山は紅葉へと移行していく。
時間がかかる。おなかが空いたので川島とドライブスルーでファーストフードにかぶりつく。現場仕事で幾度となく歴任のスタッフらと車中でハンバーガーを食べた。この感じ、なつかしい―。
さて、小牧市民病院に戻り、試作品検討を続ける。
南4病棟には昨年までスタッフを担当していたデザイナー井口さんの作品展示を予定している。南4病棟は産婦人科の患者さんが入院している。おなかの大きい人、赤ちゃんをだっこしている人の姿を見かける。病院内ではめずらしく、明るさが要求される場所だ。脚立にのぼり井口さんの試作品を実際に天井から下げてみる。点滴棒にかからない高さを確保しつつも少しボリュームを持たせた作品がこの場所に合うようだ。色彩に関しては全面的に井口さんを信頼し、任せることにしている。
面会時間を過ぎ、病棟の照明は暗く落とされる。看護師さんは作業する私たちに気を使ってディルームの照明は点灯したままにしてくれた。
21:30 所々のメンテナンス等を済ませると時間はどんどん経ってしまう。まだいくつか仕事を残しているが、病院に迷惑をかけられないので、今日のところは撤収する。
23:30 自宅に到着。さらに書類作成の仕事をする。

新しい絵はがきワークショップキット!!