Nobuyuki Takahashi’s blog

2009年 10月 31日のアーカイブ

大島 ギャラリー15寮(仮)掃除

2009年 10月 31日

7:00起床。大島では7:00から食事の献立などが放送される。そのアナウンスの声に起こされたかたちだ。
8:00 トーストを焼いて食べる。昨夜からいっしょに面会人宿泊所に泊まった新聞記者さんが「慣れていますね。」と感心する。どこに行ってもくつろいで食事をするのはやさしい美術の旅人的なたくましさである。
9:00 45寮に行く。大島では使われなくなった建物はすぐに取り壊される。離島であるがゆえに保管するところもないのだ。入所者自治会長の森さんは新しく建てられた寮に引っ越したため、それまで使っていた部屋は取り壊されることになった。私たちはそこへお邪魔して捨てるばかりの棚やタンスなどを譲ってもらう。それらはカフェの内装に使ったり、ギャラリーでの展示で有効活用する。
さて、その後は15寮に行き、いよいよギャラリースペースとして再生するための第一歩、大掃除を始める。一見地道な作業だが、とても大切なプロセスだと私は思っている。人が暮らして来た部屋の隅々まで清掃することで、その人の息吹を感じ、痕跡を心に焼き付けていく。画鋲一本、柱の傷ひとつも見逃さない。空間を体感する作業なのだ。大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレに参加した際に私たちは空き家をお借りして「やさしい家」と名付けて新潟県立十日町病院との連携プログラムを展開した。「やさしい家」を整備する、最初の作業は荷物整理と清掃だった。行き届いた清掃は空き家を家にかえる。
徹底的にゴミをほうきで掃き出し、雑巾がけして行く。サッシは取り外して部屋に風を通す。昨日からひきつづき香川県庁のにぎわい創出課の面々にお手伝いに来ていただいている。記者さんたちも取材をしながら人手の要るところは手伝っていただいた。福祉室の職員さんも慣れた手つきでてきぱきと作業を進める。
12:00 昼食は冷凍麺のうどんを食べる。これがけっこういける。青松園職員さんが私たちに振る舞ってくれた冷凍麺のぶっかけうどんがあまりにも美味しくて、それ以来とりこだ。
13:00 15寮の掃除の前に陶芸室によって大島土で製作した試作に釉薬をかける。ちょうど良いタイミングで入所者山本さんがみえる。素焼きされた大島土の試作品は荒い土味だが、なかなかボディがあって本焼き後が楽しみである。山本さんがおっしゃるには、以前精製した土よりも鉄分が少なそうとのこと。ますます仕上がりが楽しみだ。陶芸室に人が入ってくると山本さんは本当にうれしそう。「私ら入所者が作るんではなくて、大島に来て大島の土に触れて、何かかたちにしていって欲しい。社会交流の一助になれば。」とは山本さんの言葉。土をめぐり人と人、大島と外がつながっていく。
14:30 再び15寮に戻って、清掃作業の続きだ。5室のうち半分が清掃完了。記者さん、香川県職員さん、福祉課職員さんの有志が手伝っていただいたおかげで作業がはかどる。ただ、やさしい美術プロジェクトの参加者が少ないのが気がかりだ。たかが掃除だと侮ってはいけない。私たちの活動はプロセスの中に関わりを創出していくエッセンスがぎっしりと詰まっているのだ。それがなかなか伝わらないのがもどかしい。
途中で何人かの入所者が様子を見にくる。「何やってるの?」という興味を持っていただくことがとても大事。そこから話題は広がっていくのだ。入所者自治会副会長の野村さんから素晴らしく熟れた柿をたくさんいただく。「大島に植えた柿の木に生った柿だよ。」このような「大島柿」も来年の芸術祭期間中に何かの形で発信したい。
16:15 官用船に乗って高松へ。泉はもう1日大島に滞在する。私と川島は一足先に帰路へ。

大島で実をつけた柿

大島で実をつけた柿